体毛を処理すること。それはこれまで、私にとって日常的な行為だった。
子どもの頃から、母親が毎日毛の処理をしている姿を見てきたからなのか、きっかけは思い出せないけれど、小学4年生くらいから自然と剃るようになっていた。

最初はもしかしたら、大人への憧れのようなもので始めたのかもしれない。
だけど毛は剃ると濃くなってしまう。すると気になるようになり、また剃る。
そんなことの繰り返しだったんじゃないだろうか。

それに、周りの女の子たちも剃っているから、自分も剃らないといけないものだと思い込んでいたんだろう。剃らないなんてだらしない。恥ずかしいことだ。なんとなくそんな気がして、剃るのをやめられなかったし、人に毛の生えた肌を見せるのはマナーが良くないことのように思ってきた。

私は皮膚が弱い体質で、剃刀負けを起こすこともよくあったし、
いつも、足や腕のどこかには赤いぽつぽつができていた。
でも毛が生えているよりましだろうと、ずっと思い込んでいたのだ。

だけど先日、彼氏の言葉によって私の中の常識は覆された。

剃刀負けで荒れた肌を見て、彼は「もう毛を剃らないでほしい」と言った

彼は、私の剃刀負けした体を見て「もう毛を剃らないでほしい」と言った。
剃刀を使うせいで肌が荒れてしまうなら、使わない方がいいし、むしろ毛がある方が
いいとのことだった。

それに、どうして毛があってはダメなのか。
それは世間の常識に流されてなんとなくしていることなんじゃないかと聞かれ、
私は確かにそうだと思ったのだ。

そしてじっくり考えてみたら、本当に毛を剃る必要なんてない気がしてきた。
一番近くで肌を見る彼氏には毛を生やしてほしいと言われているし、私は肌を露出することが嫌いだから、他人に肌を見せる機会がそもそもない。

自分はただ習慣的になんとなく毛を剃っていただけ。
なら、なにも問題ないじゃないか。
そう思った私は勢いで彼氏と風呂場に向かい、剃刀をゴミ箱に捨てた。
彼氏はなんだかとても嬉しそうだった。

これから始まる毛を剃らない生活。新しい価値観と出会えるといいな

毛を剃らない女性について気になったのでネットで調べたところ、
ジャニュヘアリー運動というものがあるらしい。
女性たちがSNSなどで脇毛やすね毛の生えた姿を投稿するというもので、
ひそかなブームになっているそうだ。
私には写真を投稿する勇気はないけれど、少なからず毛を剃らない主義の人も
いるということが分かった。

剃刀との決別からまだ数日しかっていない私の肌には、まだ成長し始めた
短い毛ばかりだ。だけどこれからは伸びていくのみである。

その伸びていく毛を見て私はどう思うのだろう。
ワクワクするのだろうか。
いや、もしかしたら、剃りたくてたまらなくなるかもしれない。
でも剃刀もシェービングジェルも捨てたから、きっとそれがセーブをかけてくれるだろう。
とりあえず、一度伸ばしきるまでは剃りたくても我慢してみようと思う。

伸ばし切ることができれば、新しい自分の価値観に出会えるような気がする。
無意識のうちに信じ込んでいた、毛は剃るべきという価値観をぶっ壊し、
毛を剃らないことがあたりまえの日常を送ってみたい。

自分の毛を見ても、嫌悪感ひとつなく、処理しなくていいなんて楽だな、
肌も荒れなくていいなと、純粋に思えるようになりたい。
数カ月後が楽しみなものだ。