大学を卒業するまでの3年間、ファーストフード店でアルバイトを続けていました。そこで出会ったフリーターの彼と、約10ヶ月お付き合いをしました。
ひとりだったら見にいかないであろう、マンガの実写版の映画をふたりで見に行ったことがきっかけで、ふたりでご飯を食べに行く機会が増え、彼に告白されて付き合うことになりま
した。

深夜2時だけの関係。ふたりの心は、少しずつずれていった

私は彼のことがとても好きでした。
どこが好きかと問われると、当時具体的に答えられなかったけど、彼の匂いや彼の体温を感じるたび、すきという気持ちが大きくなっていきました。
ただ、彼の匂いや体温の変化に気づいてしまって、彼はもう私をあまり好きではなくなったのだと、思う瞬間がありました。

予感はやっぱり当たっていて、朝から昼までバイトをしつつ大学生活を過ごす私と、夜から
朝まで働くフリーターの彼との生活のずれが、私達ふたりの距離をぐんぐん離していきました。
そんな理由は綺麗事で、好きでなくなったのは、生活リズムのずれだけでは無かったと思います。
私達の関係は真夜中の深夜2時、散歩しながら街をさまよう、まさしく無法地帯の時間のあいだだけ成り立つ関係だったのだと思います。

ずーっと夏休みで、ずーっとお互いが20代なりたてで、ずーっと朝が来ない昼が来ない
そんな世界なら、関係は、お互いへの気持ちは、続いていたかもしれません。

私は彼と、おひさまの出ている時間に堂々とふたりで歩きたかった

彼が私に会いたいと連絡をくれることがなくなって1ヶ月程経って、彼から別れを告げられました。
別れを告げられたのは、昼間のファミレスです。
前日に私は、アルバイトの同僚たちと一緒に飲みに行っていました。彼は前日の夜仕事だったので、一緒に飲みにいけませんでした。

お互い一生懸命にお店で働いていましたし、ある程度仕事に対する考え方は一致していたと思います。
それに、朝でも夜でも、同じお店を回している仲間であるということを、私と、飲み会に行った同僚はしっかりと認識していました。
一緒に行けなかったのは、仕事だから致し方ない、私は軽く捉えていました。

しかし、彼は飲み会に行けなかったことでぶつくさと文句を言っていて、気持ちがお互い通じ合っていないことが目に見えていました。
既に私のことを好きだという気持ちが無くなった彼と、彼の匂いや体温を頼りに彼のことを愛していた私は、コミュニケーションを上手にとることができなくなっていました。

太陽の出ている時間に、彼とふたりでいる違和感。
私は彼と、おひさまの出ている時間に堂々とふたりで歩きたかった。

ファミレスでどうしても別れたくないと涙を流す私と、どうしても続けられないと寂しい顔をする彼は、絶対にもうお互いを理解することはできませんでした。
ファミレスを出て、彼を力いっぱい抱きしめた後、ひとりで帰路につきました。それからの毎日は、まさしく枕を濡らす日々が続いて、柄にもなくaikoを口ずさみ、日々を暮らしていました。

彼を全力で愛したようで、本当は空っぽな自分を埋めるためだった

別れたあともふたりはアルバイトを続け、私は大学卒業と同時に、お店を辞めました。
彼は全然知らないだろうけど、別れたあとの就職活動はとても、きつかった。
何も頑張れなくて、正社員として働く意味も分からなくて、わたしは子供のように駄々をこねていて、アルバイトばかりしていた大学生活3年間を呪いました。
もちろん、彼とは連絡をとることもなく、風のうわさで、別のお店で働いていることを、社会人になって2年目のときに聞きました。

彼と会うことは二度とないと思います。
彼と別れたあとの自分の醜い気持ち、自分の人生に対して真面目に生きてこなかったこと、全力を掛けて彼を愛していたようでただただ私は空っぽだったのだと気づいたこと。
当時の自分の幼さを反省しています。

ただ当時の私の空っぽが埋まるのは、深夜2時、誰もいない街をふたりで歩く、その時間のなかにいるときだけでした。

別れは、自分の人生を一歩ずつ進むため。今の私のほうがずっといい

私は、私の人生を真っ当に生き抜く為、自分を愛し、自立する道を今選んでいます。私はあの頃幼かった。何も彼に贈ることができなかった。
愛するとは、恋をするとは、結局今も分かっていません。彼から別れを告げられなければ、私はずるずると、彼に依存し、付き合っていたでしょう。

現実の世界を生きるため、太陽の出ている時間に社会と触れ合うために、私は彼から振られたのだと思います。
真意は分からないけど、きっとそうでしょう。
一期一会、運命の人、永遠の愛。
諸々信じていませんが、自分の選んだ世界で、偶然出会ったひとと関係を結び、恋や愛に発展したとき、その恋愛は世界の色を美しくも醜くも変えてくれる。それだけは確かに信じることができます。

私は今もひとりで生きています。
たくさんの個性豊かなメンバーに囲まれながら。
もう自分のことは見失わないし、深夜2時には寝ています。
眠れない日々が続くと、たまに彼のことを思い出すことがあります。
でもやはり、たしかに一歩ずつ前に進んでいる今の私のほうが、あの頃よりずっと誇らしく、頼もしく思えています。

あばよ!