あっという間に、あなたは4歳になった。あなたときたら、ものすごい勢いで、食べる遊ぶ寝る。「おいしいー!」と、頬いっぱい食べ物を詰めてあなたは笑う。

あなたは私が想像していた「女の子」とは、だいぶ違った

あなたが生まれてからのことを、私はずっと覚えている。あなたという女の子が生まれたことが嬉しくて、おばあちゃんやおじいちゃんは、沢山の可愛いお洋服を送ってくれた。「もう少し大きくなったら着せてあげて」と、フリルにレース、淡いピンクのワンピースも沢山。

けれどもあなたときたら、お姫さまみたいにキラキラしたそれらをほとんど着ないんだもの。「いやー!」と叫んで、2つ上のお兄ちゃんのTシャツやズボンのお下がりばかり着る。お人形さん遊びより、恐竜が好き。ケンカは、お兄ちゃんよりも強い。お兄ちゃんより、ご飯を沢山食べる。木登りやサッカーが大好きで、お兄ちゃんよりもずっとうまい。

あなたは私が想像していた女の子とは、だいぶ違った。娘が生まれたら、私は一緒に可愛いお洋服を着て歩くのだと思っていた。お人形遊びやおままごとをして、並んでキッチンに立って笑いながらお料理するものだと思っていた。

けれども、あなたは私の想像の斜め上をいく。短パンでボールを追いかけまわしながら、嬉しそうに叫ぶ。「ママ!ママ、見て!すごいでしょ」と。私は頷いて、手を振る。あなたは、ひまわりみたいに笑う。

女性の役割を押し付けられて、あなたは苦しんで傷つくかもしれない

もし、このままあなたが大人になったらと、考えないわけではない。女性らしくない装いをして、女性らしくないことが好きで、そんなあなたにもしかしたら世界はひどく冷たいかもしれない。「もっと女性らしい格好をしなよ」と、誰かが言ってくるかもしれない。

女性の役割と呼ばれるものを、押し付けてくるかもしれない。受け流せる人もいる。けれどもあなたはその時、とても苦しんで傷つくかもしれない。そんな未来を考えると、私の心が軋む音を立てる。

それでも。お兄ちゃんのお下がりの服を着て少し高い木に登り、そこから見える世界を4歳のあなたはよく見渡している。私は、下からあなたを見上げる。楽しそうで嬉しそうで、あなたはとてもキラキラしている。その目に映る世界が美しいものなのだと、見上げたあなたを通して私は知る。

そんな時、思う。「あなたはあなたでいい」と。フリルにレース、淡いピンクのワンピースなんて着なくていい。あなたが望む姿で、この世界を真っ直ぐ歩いていけばいい。堂々と好きなことをして、大人になっていけばいい。

いつかあなたが苦しむ日が来たら「自分らしく生きていい」と伝えたい

「ママ!」あなたは叫び、遠くを指差す。ひまわりみたいに笑うあなたの輝きを、私は誰より知っている。どんな花々よりもずっと、あなたはキラキラしている。あなたが生まれてからのことを、あなたが大人になっても私はきっと忘れない。

着るのはお兄ちゃんのお下がりばかり。恐竜が好きで、ケンカが強い。ご飯を沢山食べて、木登りやサッカーが大好きで、花々や宝石よりも輝くあなた。

「女性らしくなんて、しなくていい。あなたらしく生きていい」と、いつかあなたが苦しむ日が来たら、そう伝えようと決めている。私の常識があなたを傷つけるなら、私は自分の常識を変える。胸を張って前を見て。私はそんなあなたを見て、きっとまた世界を知る。

他の誰でもない、私が私を変えるのだ。