連載:峯岸みなみの「できれば明日も褒められたい」

峯岸みなみ「特に意味はないけど涙が出る日。些細な問題たちに目を向けると」

AKB48の最後の一期生で、アイドル歴14年の峯岸みなみさん。新型コロナの影響で卒業が延期となり、アイドル“留年”中のいま「かがみよかがみ」でコラムニストデビュー!「他人に褒められることをモチベーションに生きてきた」というアイドル時代を振り返りながら “宿題”に向き合います。

峯岸みなみの「できれば明日も褒められたい」

峯岸みなみの「できれば明日も褒められたい」

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先々週、私は元気がなかった。
その理由はわからない。
ここ最近、前より忙しくさせてもらっていたけど、寝る時間はたっぷりあったし、過去にはその何倍も忙しい時期を経験している。それなのに、朝起きて仕事に行くのが億劫で、帰ってテレビをつける余裕もないくらい身体が怠いことに悩まされていた。
とある撮影の日、お馴染みのメイクさんに「最近元気が出なくて……」と他愛もない世間話のつもりで話しはじめると「どうしたの?大丈夫?」と心配そうな返事が戻ってきた。決して軽くない、温かいトーンに、喉仏がグッと上がってくるような感覚のすぐあと、涙が溢れた。

「特に意味はないの」
施してもらったばかりのメイクが落ちないようにティッシュで目元を抑えながら出たその言葉は、強がりではなく、本心だった。何年もお世話になっているメイクさんは私の性格を知っている。「特にないのね、オッケー」とだけ言って、淡々とストレートアイロンをかけてくれたその振る舞いに、最大限の優しさを感じてまた泣きそうになった。

悲しい理由もしんどい理由も特にない。なのに様子がおかしい

こんな具合で、先々週の私は少し様子がおかしかった。悲しい理由もしんどい理由もこれと言って思いつかない。それがとても厄介だった。

私の調子を狂わせる大きな要因は見つからないものの、普段生活をするうえで引っかかることは沢山あった。
理想の長さに伸びてくれない髪の毛も、すんなり履けていたスカートがキツくなったことも、お風呂場に生えているカビも……気になってはいるのに、毎日のスケジュールをこなすことで精一杯だった私は、見て見ぬ振りをして過ごしてしまった。

お風呂場のカビを落とすと驚くほど気持ちが軽くなった

今すぐ解決しなくても生きていける些細な問題たちを目にする度に、自分の気持ちを少しずつ沈めていることに気付いた私は、仕事帰りの車で「ドラッグストアに寄りたい」とマネージャーさんにお願いをした。お風呂場のカビを落とす商品を一緒に選んでもらい、帰宅して早速、人生初のカビ退治に取り掛かる。洗剤を吹きかけ少し時間を置いてからシャワーで洗い流し、不快だった黒い点々が居なくなってくれた時、自分でも驚くほど心が弾んだ。それからの私は、日々自分のテンションを下げる小さな問題の解決に努めたのでした。

髪の毛にエクステをつけて理想の長さにした。キックボクシングを再開した。玄関に置いてあるネットショピングの荷物を開封してダンボールを綺麗に畳んだり、リビングにあるコートの山をハンガーにかけた。締め切りが近づいているアンケートにできるだけ丁寧に答えた。愛する猫ちゃんが遊んでほしそうにしている夜も、疲れている日は「ごめんね」って言いながら寝てしまうのも辞めて、少しの時間でも追いかけっこをするようにしたりもした。忙しくて、気持ちがよかった。

先々週、私が元気がなかったことの原因は今もよくわからない。一生懸命やった番組への批判コメントだったかもしれないし、仲良しの友人達が私無しでご飯を食べていることだったことかもしれないし、なかなか決まらない卒業コンサートに対する不安だったかもしれないし、その全部かもしれない。だけどそれらは自分の力ではどうすることもできないことだった。

日常に潜む自分のテンションを下げる敵を退治していくと

そんな時思い出したのはインスタグラムのストーリーで見かけた誰かの言葉。
“不安や悩みがある時はどうしていますか?”という質問に対して“その原因を考えて解決していくかなぁ”と答えていて、その時の私は“それができたら苦労しないんだよなぁ”と、思わず呟いてしまった。だけど、どうやらそれは真理らしい。
まずは手の届くところから、日常に潜む自分のテンションを下げる敵を退治していく。そうしていたら落ち込む暇がなくなった。

この方法で全国の落ち込んでる人、全てを救えたらいいのにと思うけど、そううまくはいかないこともわかってる。頑張れない時は徹底的に頑張らなくたっていいと思います。前向きになれない自分を責めないでね。何かしたいけど、その何かすら浮かばない時に、ここに綴った言葉達があなたを支えてくれることがあるならばとても嬉しいです。

自分の力で自分を取り戻す方法を知る、ということ

これからの私は「自分のモチベーションを他人に委ねないこと」を目標にしたい。

例えば、友達。いつでも自分の悩みを聞いてくれるほど心に余裕があるとは限らない。仮に恋人。アテにし過ぎてしまえばその存在がなくなった時、ひとりで立っていられなくなるのは怖いことだ。家族もそう。離れて暮らしている家族に簡単に会えないこのご時世、自分の力で自分を取り戻す方法を知っていたら、これから生きていく上での安心材料になる気がした。
こんな風に考えられるようになっただけでも、1週間悩んでいた甲斐があったのかもしれない。

次は体脂肪が表示されなくなってしまった体重計をどうにかしようと思う。
直るものなら直したいし、無理なら新品を買ってやる。そんなことで私が元気でいられるなら。

Tokyofm「峯岸みなみのやっぱり今日も褒められたい」

峯岸みなみさん

◇放送時間:木曜日21:00-21:30

◇出演者:峯岸みなみ(AKB48)

AKB48の1期生で、朝日新聞の女性向けWEBコラムサイト「かがみよかがみ」内でコラム連載を持つ峯岸みなみの新番組がスタート!アイドルとして15年の活動を経て、30歳という年齢が見えてきた一人の女性としてリスナーと本音で向き合う30分の番組です。一日の終わりくらいちょっと褒められたい。そんな思いを共有しませんか?

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