私の父は、母の再婚相手だ。
仲は良好で両親と私でお酒を飲みに行ったり、誕生日はお互いに贈り物をする仲だ。
ただ、私と父は、私が思春期の時に裁判で争っている。
仲良くなろうと努力した。親からの、家族からの愛情を欲していた
よくある家庭内不和の延長線でだ。当時は捕まればいいと思っていたが、予想通り捕まることはなく、私の日常生活の中に戻ってきた。
自分の不甲斐なさと世の中への諦めを感じた。悪い意味で、どうすることもできないことが人生では沢山ある事を学んだ。
父になったのが、私が高校一年生の時だ。私だけ、実の父親と過ごしていたので、家族の中に長女というポジションで知らない女が入ってきた形となった。その当時は、家族に私の事を受け入れてもらいたくて、仲良くなろうと努力した。親からの、家族からの愛情を欲していたのだ。
幼い弟達はとても可愛かった。すんなり姉を受け入れ、慕ってくれた。ただ、血縁関係のない高校生の事をすんなり可愛がれる程、父は優しくはなかったのだ。私が父に多くを望みすぎていたのかもしれない。
仲良くする理由。それは、弟と離れ離れになりたくないからだ
社会人になった今でも何故、仲良くしているのか。理由は弟と離れ離れになりたくないからだ。一回り下の兄弟達は、家庭でどうにもならないと、まず私を頼ってくる。父を捨てれば、母や兄弟ともきっと会えなくなってしまう。僅かに優しい時の父と家族の顔が頭をよぎった。その繋がりが、思い出が、私には捨てられなかった。
家庭環境を知っている友人には、父と仲良くしていることに対して、とても不思議な顔をされる。普通の感覚だと法廷で争った相手と仲良く出来ること自体がおかしいのだろう。私ははぐらかすように笑うしかなかった。弟のこともそうだが父とのいい思い出もあったのだ。その時の父だと思い込んで接していた所もあるのかもしれない。ただ、私には試みても捨てきれなかったのだ。また愛されたいと願っていたのかもしれない。
一度も謝られていない。いつか、罪を認めて謝ってくれるかもしれない
家庭を持った今、私は実家に帰るというと夫に止められる。その気持ちは分からなくはない。相手が同じ立場だったらそうするのだろう。そして私の夫は心底私の父を嫌っている。家族構成を説明した際、詳細は省いたが何かを感じ取ったのであろう。夫には、私が嫌いになりきれない分、私の父を嫌っていて欲しい。それだけで夫は私の事を大切に思っていてくれていることを実感できるからだ。
私と父との仲は良好だ。ただ、それはひとえに私の努力だ。父は犯罪を犯している時点で私に仲良くしてもらっている立場なのだ。周りによく笑顔で言っている「娘とは仲が良くて」も「仲良くしてもらっている」の間違いだよ、お父さん。
いつか一緒にいれば、父の中でなかったことになっている罪を、認めて謝ってくれるかもしれない。私は一度も謝られていないのだ。親は子に悪い時は謝ることの大切さを教えるが、親の方ができないなんてただの皮肉だ。親だと認めたくて、そばにまだいるのだ。
私は少しの希望を持って、父と仲良くする。
私が諦める前に、父親へと変わってくれる事を祈りながら。