うちの家は、父、母、私、妹、弟の5人家族。
周りからは「家族仲良いよね」「お父さんもお母さんも優しそう」と言われることが多い。
実際仲は良い方だと思う。父母は優しいなと感じる場面もあるし、何かあれば私のためにたくさんのことをしてくれる2人には感謝していて、親孝行をしたいとも思っている。

でも、私はそんな父母のことが、「好きだけど、嫌い」である。

父にとって私たちは犬と同じ『ペット』なんだ

昔から父は力で相手をコントロールしようとする人だった。怒られれば必ず手が出るため怪我をすることもあった。

まだ小学生だった私が部屋の中で靴下を履いたまま歩いていた時、父に「床がすべるから脱ぎな」と言われたことがあった。大丈夫だと私が答えると、次の瞬間、父に足をひっかけられて私は転倒した。倒れた私に向かって父は「ほら、だからすべるって言っただろ?」と平然と言った。私はその時、手の着き方が悪くて手首を少し捻ってしまい、しばらく痛かったのを覚えている。

小学生の頃、「犬を飼いたい」と言った。
父は私たち姉弟に向かって「うちにはペットが3匹もいるから、もうペットはいらない」と言った。何度か動物を飼いたいことを伝えたが、毎回同じことを言われた。
父にとって私たちは犬と同じ『ペット』なんだ、と子どもながらに悲しい気持ちになった。

母はそんな私たちを常に近くから“傍観”しているだけで、フォローしたり助けてくれたりすることはなかった。

思わず大きな声で「...死にたい!!」と叫んだ

一番嫌な思い出が残っているのは、高校生の時だ。

今まで父に対しての恐怖心から自分の気持ちを言えず、言いたいことを我慢してきたことも多かったのだが、
ある日ふと「別に怒られて殴られても、殴り返せばいいや」と思った。
何か糸がプツンと切れたような感覚だった。

その日から私の、盛大な反抗期が始まった。

家では家族に対してイライラし、学校では部活が厳しくストレスが溜まり、思い通りにいかない毎日が嫌で仕方がなかった。
特に高校2年生の時にはひどく、朝起きて第一声が「死にたい」だった。
特に母には強く当たった。

そんな日々が続いたからか、ある日父から呼ばれ、父母と私と3人で話すことになった。
毎日死にたいと言っている私の話を母から聞いた父が、私に向かって言った言葉は「お前、うぜぇんだよ」だった。
その言葉を聞いた私は、心の底から物凄い勢いで悲しい気持ち、悔しい気持ち、わかってもらえない突き放された苦しさがこみ上げてきて、思わず大きな声で「...死にたい!!」と叫んでしまった。
その言葉を聞いた父は怒鳴り声で一言、「じゃあ死ねよ」と私に向かって言い放った。
母はその時も何も言わず、ただ無言でその場にいるだけだった。

その日から私は、家の中に自分の居場所はなく、自分はいらない存在、必要とされていない、生まれてこなければよかった人間なんだ、と思うようになった。
こんな重たい悩みを友達にも誰にも相談できるはずはなく、苦しさを一人で胸の中に抱えながら過ごしていた。
波のように、思い出が頭の中で押し寄せたり引いたり、ぐるぐると回って勝手に涙が溢れた。

悲しい思いをした分、自分は子どもを大事にしよう

そんな日々を送って、大学に進み、無事に就職した私は今、保育士として働いている。

きっかけは色々あったけれど、その一つはやはり悲しい思いをした分、自分は子どもを大事にしよう、子どもを幸せにできる人になろうと思ったから。

心にできた深い傷は、大人になってもまだ時々痛み出すけれど、子どものことを勉強していくうちに自分も大事な存在なんだと思えるようになった。
そんな今は、自分を育ててくれた『嫌いだけど、好き』な父母のことも大事にしたいと思っている。