高校3年生のとき、初めての彼氏に、
「別れてください」
と言われた日のことを今でも思い出す。

かわいいと褒めてくれる彼。でも、褒めてくれるのは容姿だけ

私には今、付き合って半年になる彼氏がいる。彼とは大学のサークルで出逢った。
彼はいわゆるイケメンで、甘え上手で、友達が多くて、気分屋で、大学に来ないで飲み歩いてるような人だ。

彼は私を容姿で好きになったと言う。
それ故なのか、容姿に関する注文が多かった。アイプチをしたら目が変だ、アイラインを覚えたばかりの頃は目が真っ黒になってる、眉毛をきちんと整えろ、髪型を変えろと言った。

いつか彼が言っていた。
「かわいい彼女と付き合ってる俺、ってステータスに誇りを持ってるのかもしれない」

彼にかわいいと言われるのは嬉しかった。
逆に、彼は私の容姿しか褒めてくれなかった。私は一生かわいくあり続けけないと認めて貰えないのだろうか。歳をとったら?事故などで顔が変わってしまったら?彼は私を好きじゃなくなるんだろうか。

彼は私の容姿が好き。だからそれ以外には興味がないと思っていた

彼が私を好きなところは外見だけだ。中身はむしろ嫌われていた。
私ははっきり言って要領が悪く、スポーツも勉強も料理も上手く出来なかった。当然彼の好きなゲームもダーツも麻雀もビリヤードも出来ない。彼は丁寧に教えてくれたけど、いつまで経っても上達しない私に彼は呆れていた。要領のいい他の人の彼女が羨ましいと呟いていた。
私は喋るのも苦手だ。一生懸命話せば無理してる、本当に稀にだけど吃ってしまったときは努力が足りないとも言われた。
私の出来たことじゃなくて出来なかったことにフォーカスが当たっていた。

彼は気分の浮き沈みが激しい方で、彼の状態は人伝てで聴くことが多かった。
あいつ、大丈夫?なんて声を掛けられるけど、私は何も知らなくて。彼が辛いらしい状態のとき、返ってこないLINEを待ちながら、どうしたら良いのかわからなかった。
他の人には弱みを見せるのに、私には話もしてくれないことが悲しかった。

現実は皮肉なもので、彼と私は似ていた

でも、今考えればわかる。何があったかちゃんと聴けばよかったんだ。
話したくないなら話したくないって言ってくれて構わない、でもあなたのことを心配している、と伝えればよかった。
彼のことを本当に考えているなら、頼ってくれなくて悲しいなんて発想にはならないはずだ。 

自分のことしか考えてなかった。
彼がどんな状態かわからないとき、いつもと変わらないLINEをして、彼の抱えてる悲しみに気付かない振りをした。

私と彼はよく似ている。聴く音楽も、笑いのツボも、食の好みも、何も一致しなかったけど。
彼の容姿で好きになった、悪いところばかり見えてしまう、辛いときは彼を頼らない。
私の考えていることは、きっと彼も考えている。そんなのが似ているなんて、皮肉だ。

思い出すのは人生で一番嬉しかったあの日のこと。

修学旅行の最後に、元彼がくれたお土産。天然石のブレスレット。同じ場所に行ってるんだから、お土産なんて変だと笑った。だれど、あのときが多分、人生で一番嬉しかった。
「薄ピンクと深い紫、どっちがいい?」
薄ピンクを選ぶと、
「そっちは俺の誕生石なんだ。紫のはお前の誕生石。いいじゃん、付き合ってるっぽくて。」

私を振った元彼に一生逢う気はない。
元彼が私を振ったから、私は幸せになれたし、私を振った元彼は不幸になった。
そうやって信じてこれまで過ごしてきた。
じゃないと、君と別れてから毎晩泣いていた高校生の自分が報われないと思うから。

いずれ私と彼は別れるだろう。
なんというか、相性が悪いのだ。
でも、私から別れようとは言わない。
元彼に振られた日、振られる側の辛さを知った私は、他の人にこんな辛さは絶対に味わせまいと心に誓ったから。
プライドの高い彼のことだ、私が彼の言うことを聞かなくなれば、すぐ別れることになるだろう。

私のたった一人の元彼よ、君は幸せになったか?お願いだから、不幸になったと言ってくれ。