仕事を辞め、3年かけて世界中を旅した。タイのバンコクからスタートし、フランスのパリからナミビアのヒンバ族の村まで、のべ80ヵ国。
常識は国によって違う。そういった発見ができるから、旅はたまらない
ラオスでは子供の頭を撫でると失礼だと言われるし、インドでは相手が何を言っているか分からなくて首を傾けると「オッケー」のジェスチャーだと勘違いされる。危ないイメージのあるパレスチナの人々はとても優しく旅人を迎え入れ、エチオピアのミステリアスな少数民族は観光客を金づるとしか見ていなかった。
旅に出るまでは、表面しか見えていなかった“情報”が、現実の経験として私の中に蓄積される。常識は国によって違うし、ましてや日本の常識など、世界では完全にマイノリティーだ。そういった発見があるから、旅はたまらない。
旅の中で一番長くいたのは、アフリカだ。1年以上も居たのだから、3日に1日以上はアフリカにいたことになる。
アフリカ。あなたはどんなイメージがあるだろうか。下腹を膨らませて、飢餓に苦しむ子供。紛争、スラム、エボラなどの感染症。そんなマイナスなイメージばかりを持ってはいないだろうか。
確かに多くの国は貧しく、未だ水や電気もない国や地域も多い。しかし、そこに住む人々はどうだろう。「今日品物が売れたら、明日のご飯が買える」と言っていたマラウィのアーティストは、一つのキャッサバを皆で分け合い「分け合う事は助け合う事だ」と言って笑った。
セネガルの空き地では、子供たちが裸足で走り回り、空気の抜けたボールを追いかけて楽しそうにサッカーをしていた。お金がなくても、便利で贅沢なものが何もなくても、幸せそうに生きている人たちの何と多い事か。
人生を豊かに生きるコツは「幸せの基準」を低くして、見逃さないこと
日本で幸せな人生はと問うと、「何不自由ない暮らし」と考える人が多いと思う。それは安定した仕事であり、つまりは経済的な豊かさである。
しかし、アフリカの国の人々に同じ質問をしたら、何と答えるだろう。間違いなく多くの人は「家族みんなの健康と平和」と答えるだろう。同じ人間であるのに、同じ条件で幸せを感じたり、感じられなかったりする。それは国の違いに限らず、同じ日本の中でも起こり得る。
私は、人生を幸せに生きるコツは、幸せの基準を低くすることだと思っている。それは人生の目標を低く設定するという意味ではない。
志を大きく持つのは、良い事なのだ。ただ忘れてならないのは、小さな幸せを見逃さないという事だ。今日もコーヒーが美味しいとか、今日も朝から健康だとか。観た映画が面白くて最高だとか、いい友人を持てて幸せだとか。
そして、その小さな幸せの基準というものは、何かと比較して得られるものではない。誰が何と言おうと、あなただけの物差しで構わないのだ。
誰かと比較しないというのは、なかなか難しい事だ。けれど、あなたは誰かの人生を生きる事は一生できない。あなたが決めた、あなただけの幸せの基準を満たしてあげる。そう考えると、幸せになるのはそう難しい事ではない。
幸せに対する観念を変えて、まずは「自分」が幸せになることを考える
日本は戦争もない安全な国だ。世界中の国と比べても清潔で、発展していて、生活水準も高い。けれど、幸福度は低く、自殺者数は驚くほど高い。
私が、あなたが、日本を、世界を変えるのはたやすい事ではない。では、まず自分の意識から変えてみてはどうだろうか。幸せに対する観念を変えて、まずは自分が幸せになる。それができれば、次はあなたの家族に、友人に、知人に、そのシンプルで簡単な秘訣を教えてあげる。
あなたは、あなた以上でも以下でもない。法を犯さずに誰かに迷惑をかけなければ、何をやっても良いと思う。今の状況が辛ければ、逃げてしまえばいい。それは電車に飛び込む事よりも、簡単な事だとは思わないだろうか。