ものすごい愛さんからの総評

今回、読み物としてのおもしろさ、執筆者の魅力をどれだけ文章で表現できているかをポイントに、受賞者を選ばせていただきました。

あくまでも、受賞作品はわたしの好みが反映されているものに過ぎません。
受賞した作品はもちろん、それ以外の作品もどれも素敵なものばかりでした。
なんだよ!選べねぇよ!つーか選ばせるなよ!と、審査員らしからぬことを思ったほど。
審査員とはいえ、人様の文章について評価できる立場でないのは重々承知です。

しかし、心の引き出しを開け、エッセイというかたちで内面を見せてくださったみなさまに対して、真正面から向き合い、嘘偽りのない気持ちを自分の言葉でお返しすることがわたしにできる最大限の誠意だと考えております。

賞から漏れてしまった方々も、どうか気を落とさず、「今回はたまたま選ばれなかっただけ!」「なんだよ、こんなサイコーなエッセイなのに見る目ないやつだな!」とフラットに受け止めていただけたら幸いです。

わたしは、文章は自分のために書くものだと思っています。
でも、書いた作品を世に放つことで、多くの人の目に触れ、時間をかけて浸透し、巡り巡っていつか自分のところに価値あるものとして戻ってくると信じてやみません。

どうか、今回のコンテストだけでなく、『かがみよかがみ』というメディアに限定されず、他者の評価に囚われず、消費されることに抗い、書かずにはいられない衝動を大切にし、これからも様々な場所で作品を生み出してください。(「書きたくない」「書かない」と思うのも大切にすべき感情のひとつです)

がっくりと肩を落とさずにはいられないような、ずしんとお腹が重くなるようなしんどい日々の中、かたちは違えどそれぞれの生活にたしかに存在している幸せに触れさせてもらえたことは、このうえない喜びです。
楽しくて、愛にあふれていて、読んでいるこっちが思わずスキップしたくなるような素敵なエッセイを読む機会を与えてくださり、ありがとうございました。

◆ものすごい愛賞

妹にカミソリを握らせて私は服を脱ぐ。「ひと思いにやってくれ」と背を向けた(深底うみ)

テンポのいい語り口と開放的な表現に、本人たちは至って真剣なはずなのにどうしてもコミカルさがにじみ出ている様子がありありと目に浮かび、思わず笑ってしまいました。
また、選んだ言葉の強さ、カラッと気持ちの良い文章から、ご本人のパワーをビシバシ感じました。

コンプレックスを題材にしているのに、そこに注視させて引きずり込もうとせず、「コンプレックスなんだよ!でも、そんなことよりもさ……」とあくまでも明るいテンションで自身の伝えたいことを伝えるためのツールとして活かしているのがすごいな、と感心させられました。
決して心から愛せる存在にはならなくとも、コンプレックスの捉え方に変化をもたらしてくれる存在があるというメッセージは、きっと多くの人の救いになるのではないでしょうか。
深底うみさんの他の作品も読みたい! と、今とてもウズウズしています。

 そして次点…!

妄想の中でつくり出したヒロイン。ずっとその背中を追いかけている(あましょく)

“誰かと”というと、恋人や家族、友達など実在する人間をイメージしがちですが、妄想でつくり出した架空のヒロインについて書かれた視点がとても新鮮でした。

もともとわたしは「自分を助けてくれる存在はなんだっていいんだよ!」と声を大にして言い続けていましたが、あましょくさんのエッセイを読んでその思いがより確固たるものになりました。
自分の中だけにいる神様、自分だけが持っているお守り。そういう存在を当たり前のように認めている内容に、一読者として感謝いたします。

サクラへの感情は、絶対的な憧れだったり、一歩踏み出す勇気になる指標だったりと、瞬間によって異なるのは至極当然なのですが、感情の変化に明確さを意識するともっとサクラの魅力が際立つのではないでしょうか。

音が鳴って玄関を開くと、セロリを持っている彼が立っていた(さくらいまゆ)

なんてことない日常にひそむ、ささやかで愛おしい一つひとつの事柄を、見落とさないように取りこぼさないように丁寧に描写されているのが魅力的でした。
上手く言語化できない、むしろしないほうがいいと思っている、自分だけの穏やかな喜びはきっと誰だって持っているはず。
このエッセイでは、そんな誰かの宝物をこっそり見させていただけたように思います。
字数制限があるため表現しきれなかった部分があったのかもしれませんが、抱いた感情を必然として終結させず(そこもまた良さではありますが……)、心の機微についても書かれていたらより一層さくらいまゆさんの繊細でやさしい視点が活きてくるのではないかな、と思いました。

おばあちゃんと呼ばれることを嫌がる祖母は、3歳の私に「マミー」と呼ばせた(内野紅)

“とんでもねぇ”というパワーワード。プラスには捉えにくいざっくばらんな表現なのに、そこからマミーに対する愛情がひしひしと感じられ、そのギャップがとてもおもしろかったです。
後半に書かれている指輪の描写、病床に臥してもなお美しさとしなやかさを持ち続けるマミーの“とんでもなさ”に、思わずグッときました。
文章の流れ、段落の接続に少し唐突さを感じたので、そのあたりに気を配ることでさらに“とんでもねぇ”エッセイになるのではないかな、と思います。

以上、「今日もあなたと、スキップで」のものすごい愛賞、次点作品の発表でした!たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。現在募集中のテーマはこちらから。みなさまからのご投稿、お待ちしております!

ものすごい愛さんの新著 今日もふたり、スキップで~結婚って ‶なんかいい″

今日もふたり、スキップで

結婚して、まる3年。夫婦、ふたり暮らし。食べさせたいのはきれいに焼けたほうのハンバーグ、ついでにもうひとつ淹れるドリップコーヒー、 眠れなくて深夜に誘う近所の散歩…楽しい、楽しすぎる、楽しくってしょうがないぜ、結婚生活! 夫婦の仲良しエピソードから、義両親との関係、お金のつかい方、家事分担、夫婦円満生活の根底にある「考え方」まで。読んだらどうしたって幸せになってしまう、“ものすごい愛” にまみれたサイコーにハッピーな日常エッセイ! 収録エピソードをもとにした、書き下ろし漫画も5本掲載。