年始恒例の学生マラソン大会で、忘れられないシーンがある。

ある監督が、最終走者に「男だろ!」とげきを飛ばしていたのだ。ランナーは右腕を高々と上げ、一層力強く走っている。掛け声は効果的だったのだろう。その学校は、最終区間で前に走る学生を追い抜き、優勝テープを切ったからだ。

しかし、私はテレビの前でもやもやしていた。

男女に対する固定観念は、今も職場をはじめ様々なところで散見される

もし走者が女性だったら、監督は「女だろ!」と言うのか? 想像してみたが、「女だろ!」と発破をかけられても、力が湧くとは思えなかった。

女らしく、女っぽい、女子力……。どれも力強いイメージとは結び付かない。むしろ柔らかさや、やさしさを連想してしまう。自分の心底にある、男女に結びついた強固なイメージに唖然とする。例の監督と、男女の見方はさして変わらないのかもと、少しがっかりもした。

一方で、士気をぐんと上げた男子学生にも、ふつふつと疑問が湧いてくる。彼はまだ十分に若い。だというのに、「男だろ!」という、よく考えたら意味がわからない掛け声で,
奮起していた。「生まれたころから男だぜ!」とつっこむわけでもない。男心はよくわからないと、ため息がもれた。

男女に対する固定観念は、今も職場で散見される。社内の地位で見れば分かりやすい。内閣府の発表で課長職以上に占める女性の割合は11.8% (2018年度)だ。ちなみに、安倍元総理は、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を3割にすると掲げていたが、早々に先延ばしされた。

令和に至っても、女性はリーダー役に心もとない、サポート役が良いと思われていないだろうか。あるいは、女性自身がそう考えていないか? この壁を突破するには何が必要なのか、改めて考えてみた。

組織内での男性との「交渉方法」を身に着けるには、オーラを磨くこと

企業につとめて20年が経ち、50代に入った私の結論はこうだ。ずばり、組織内での男性とのケンカ方法(交渉方法)を身に着けること。男性らをビビらせる怖さ、ケンカ相手に選ぶと厄介だと思わせるオーラを磨くことだ。

余計な攻撃から身を守る盾になるし、相手の陣地を奪う(明け渡してもらう)術にもなる。「そんなの無理、無理」「いやな女と思われたくない」なんて目を背けないでほしい。「昭和的なやり方…」とバカにするのもちょっと待って。先の「男だろ!」だって、バリバリの昭和フレーズだが、令和でも男子には十分有効だった。男性陣に相対するには、古典的な手法だって使うべきなのだ。

幸いにも、女性は言葉による攻撃(もとい、静かな指摘)は一枚上手だろう。現に、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会から退場した男性がいる。彼はきっと公の場で、女性の足をひっぱろうと思ったのだろうが、しっぺ返しを食らった。SNS時代の個人の力を見誤った結果だ。

一人ひとりが声をあげることで、大きな変化を生み出せる現代。慣例を変えたい女性にとってはよい流れが生まれている。

令和時代にもう一皮むけて、組織を有利に泳ぐ強さを身につけていこう

もちろん、常に臨戦態勢を保ってとは言わないし、激高は逆効果。大事なのは、スイッチが入るととても怖い女よと、会議の折などでチラ見せすることだ。身近に参考になる先輩女性がいれば、その人の真似をしてもいい。できると噂の男性を模倣するのもありだろう。見た目で示す方法もある。

少なくない男性が、体を鍛えたり、仕立ての良いスーツを着たりして、自分は「すごいんだぞ」と見せつけている。「弱弱しい」と見られないプレゼンテーションの効果は侮れない。

平成から令和になったとき、「時代が変わった」という声をよく聞いた。男女雇用機会均等法から36年。日本の女性も、令和時代にもう一皮むけて、組織を有利に泳ぐ強さを身につけてみたい。

そうすれば、越えられなかった3割の壁もあっという間にクリアできる! 切にそう願っている。