「勉強もスポーツもできて、さすがだね。すごいね。」
自分で言うのもなんだが、幼い頃からクラスメートやその親といった周りから優しくちやほやされていた。成績も悪くはなく、運動会やマラソン大会では上位だった。他にも、学生時代には、学級委員やキャプテンに指名され続けた。
なんだか分からないけれど、人が自然と集まってきてくれて、自分の意見に賛成してくれている。人前に立つことに慣れ、先生を目指すようになった。大学でも、採用試験講座を真面目に受け、大学から推薦枠をつかみとった。そして、無事に合格。周りから見ると順風満帆であり、自分自身もそう感じていた。
順風満帆な私の社会人生活が始まった。ある日、涙が止まらなくなり休職をした
そんな自信たっぷりで、始まった社会人生活。全てが大きく覆された。
保護者からクラスでの発言の一言一句を電話で指摘され、私の指導が社会人として、おかしくないかと指導される。授業も教室に来ない生徒、来ても受けない生徒が何人もいた。
人生で初めて、否定され、嘲笑われた気分だった。どうにかしないとと、もがき、人に相談し本を読み打開策を考え続けた。だが、周りには、この状態になるまで気づくことができなかったことに落ち度があると言われた。間違いなく自分に力がないこと、非があることは分かっていた。だからこそ、トドメを刺された気分だった。どこにも味方がいない気がした。
ある日、とうとう涙がとまらなくなった。人前に出ると涙が溢れていた。学生時代の自分とかけ離れた自分になっていた。
休職となった。声を出して泣く日々を過ごした。いい大人なのに、と思ってしまうが、そうなってしまう精神状態だった。病院で薬をもらい飲んだ。
仕事が人生で初めての挫折だと気づいた。これまでの考え方を見直すきっかけになった
日々、休んでいると自然と自分と向き合う時間ができた。これまでの人生を振り返ると、仕事が人生で初めての挫折だと気がついた。今まで、多少無理してでも乗り越えてきていた。努力は必ず裏切らない。成功者は努力している。そんなポリシーを持ち、生きていた。
自分に厳しくしていた。学生時代は隙間時間も惜しんで勉強し、先生になってからは、家でも仕事し、休日出勤もした。生徒にも同じように、少しの立ち歩きも許さず、厳しく注意ばかりしていた。そんな窮屈な教室に入りたいとは思わないだろうと気づいた。
また、周りとの衝突を避け、相手の意見に対しイエスマンになり、飲み会でさえも相手の気持ちを読み取り、相手が喜ぶ答えを言うようにしていた。保護者から言われたことに対しても真に受け、無理難題もこなそうとしていた。
これまで、成功や体裁ばかり気にしていたことに気付かされた。非難を受け、挫折したことで考え方を見直すきっかけになった。
私は今、前を向いている。考え方を変えて、自分を変えて、また教壇に立とう
日々の中にゆとりをもち、自分を甘やかそう、良い子ちゃんを卒業しよう。そう決心した。きっと、早く気づいていれば、生徒たちにも楽しい思いをさせられたと思う。楽しくレクリエーションをすることや、自分に余裕を持ち、楽しく一緒に雑談をするができただろう。生徒たちには申し訳ないことをしたと思っている。
今の自分のままだと生徒に同じ思いをさせてしまうから退職を選んだ。ほんの少し遠回りして、自分が成長して、また先生になろうかなと思う。ありがたいことに次の仕事が見つかった。考え方を変えて、自分を変えて、また教壇に立とう。
今、前を向いている。