「あっ、すみません」

私は職場で「すみません」という言葉をよく使ってしまう。友達の前でも「ごめんね」を多用してしまう。後から考えたら、別に謝るようなことをしていないのに。反射的に口から出てしまっている。

ああ、また言いすぎちゃった。誰かに助けてもらったときは、「すみません」より「ありがとうございます」を使いましょうと、本にも書いてあったのに。昔読んだ自己啓発本を思い出す。体に「すみません」が染みついてしまっていて、癖がなかなか抜けないのだろう。

「すみません」を多用すると、濡れ衣を着せられることがある

「す……」と口からサ行が漏れ出ると、思わず口を手で押さえる。

自分に自信がなくて、嫌われたくない。だから、先に防御線として、「すみません」の盾を自分の前に立てるのだ。

おごっているとか思われたくない。どちらかというと、謙虚なやつだと思われたいし、そう見られたい。いい人だと思われたい。そして「すみません」を連発してしまう。

でも、あまりにも使いすぎると、弊害が出てきてしまう。以下に挙げてみよう。

まず、濡れ衣を着せられることがある。

自分がしたミスや失敗で迷惑をかけたときなら、分かる。でもたまに、これは、えっと誰が原因だろう……という事象が出てくる。そのときに、つい癖で先に謝ってしまってはだめだ。

「あっ、すみません。もしかしたら、私かもしれないです」なんて言ってしまうと、後でそうじゃないときに、私じゃないやん!と言えないのだ。ああ、またしばしばさんね、という空気になって損をすることがある。「すみません」を言うときは、ちょっと様子を見てからにしよう。

自分と同様、「すみません」を連発する人に出会ったときに気がついたこと

ふたつめに、相手に気を遣わせてしまう。

私の場合の「すみません」は、「そんな、全然大丈夫だよ」とか、「気にしないで」という返答を相手に要求してしまっている。というか、自分でも、そう言ってほしいという願望があるのだろう。そして、相手に気を遣わせてしまう。まるで自分が叱ったり、謝らせたりしているんじゃないかという気持ちを、相手にさせてしまう。

それは、自分と同じように「すみません」を連発する人に出会ったときに、「はっ」と気がついた。「すみません」という言葉、おそるべし。

みっつめに、逆に反省していないと思われる。

「すみません」の回数が多いと、一回当たりの重みが変わってしまう。それ、本気で思ってるの?とか、本当に反省しているの?って、相手から思われてしまう。「すみません」が軽くなる。だから、ここぞというときに、本来は「すみません」を使うべきなのだ。

――というように、自分で振り返れば振り返るほど、「すみません」はあまり多用したくないなと改めて思うのだった。

「す……、いや、あ、ありがとうございます」。私の戦いは続く

話は変わるが、私は笑顔が素敵な女性に憧れている。自然な感じで、にこっと笑って、みんなを虜にさせるみたいな。でも、それ、私にはできないんだああ。

心が冷めているのか、あんなにまぶしい太陽みたいな笑顔はできない。どうしても、人工的な笑みになってしまうのだ。意識すればするほど、うまくできない。鏡には、引きつった半笑いの顔が映ってしまう。

「あっ、ありがとうございます!」
プラス、きらきら笑顔。
はい、素敵の出来上がり。

……実際は、「あっ、す……、いや、あ、ありがとうございます」

そして、笑顔を!と思いながらも、一周回って、なぜか真顔。

ああ、なんて難しいんだと、ばかなことを考えながら、私はきっと明日も口から出ようとする「すみません」と戦っているのだろう。