母に伝えた将来の希望は、なんだか分不相応に思えてしまった

私は地方出身、地方在住だ。
この場所は正直息苦しい。ネットやメディアでは女性の権利が叫ばれて久しいが、私はあまり実感した事はない。いや、それ以前に私の頭がアップデートされていない。

一番最初にこの場所に絶望したのはいつ頃だっただろうか。恐らく、高校卒業後の進路を決める時だったと思う。
あまり明確な目標が無く、ただ、好きな方向性だけがぼんやりとあった。
しかしその道に進むには大学に入学、上京しなければならない。

母はまず、女に大学は必要無いと思っている。近場の短大か専門あたりに進み、就職し結婚すればいい。そして子供を産み育てるという自分と同じ道を望んでいた。
だから自分の希望を口にするのは気が引けたが、それとなく伝えてみた。

母は否定はしなかったが賛成もせず、行ってもいいけどあなたには無理なんじゃないか、と言った。私はなんだかとても恥ずかしくて、分不相応な事を言ってしまったと思い自信を無くした。

資格や経験のない女性に、地方の就職先はどこも厳しかった

元々自分に自信がない方なので、あっという間に夢はシオシオにしょぼくれて、現実離れした事を考えてないで地元で何か道を探そうとシフトチェンジした。

こんなにも簡単にシフトチェンジできるのだから、たいしてやりたい事じゃなかったんじゃないかとも思うが、私の身に相応な道だと思うとしっかり型にハマっているという嫌な安心感も覚えた。

とりあえず色々な方向で探してみよう。まずは就職という形で探してみた。その時が一番悲しかったかもしれない。
景気が悪い時期でもあったが、どの仕事にも魅力を感じず、給料も13万から良くて15万からのものばかりで、これが現実なのか、と思うと将来がとても色褪せて見えた。ちなみに、この場所で国家資格や特別な経験などが無い女性が仕事を選ぼうとすると、あれから十年近く経った今でもあまり変わらない。

とりあえず私は地元の経理系の専門学校に通う事にした。潰しが効くと思ったし、国家資格では無いものの資格がいくつか取れるから。というのもまあ母の受け売りで、そう言われたからそう思ったのだ。
その後は経理系の仕事をしたり、全く別な仕事をしたりして普通に働き、普通に結婚をした。

身近な人から植え付けられた性別の型を破るのは難しい。だから…

私には3歳下に弟がいて、弟もぼんやりしていた方だったが、すんなり大学に進学し上京、今はメディア系の仕事をしている。
弟にも明確な目標は無かったが、男だから大学に行かせるのだそうだ。

私はこの話で母を批判したいわけでは無い。全ては自分に原因があるし、後悔しているわけでも無い。第一大学に進んだとしてちゃんと希望の仕事をしていたかも分からない。今も地元の友人達と仲が良いし、性格の合う素敵な夫にも出会えた。もちろん母にも感謝している。育て方も普通だと思うし、まず本当にやりたいのなら止めなかったと思う。

ただ昨今の、ジェンダー、特に女性の権利についての様々な意見を見聞きし、自分の性のフィルターがいかに限られたものだったかに気づかされたのだ。

何かを決定する時に、女の型がある。
その型をぼんぼん飛び出ていく女もたくさんいる一方で、型にハマる事を望む女もいる。私もぼんっと飛び出したかったが、勇気が無かった。それは大方自分の性格のせいだが、一番身近な人から植え付けられた女の型を打ち破るのは簡単な事ではない気もする。

だから私はまず、自分をアップデートしなければならない。変えるべきなのは自分の型なのだ。いや、本当は型なんて無いんだ。
きっと気づいてる女性もいる。というか、これは女性だけに限った話では無い。誰もが植え付けられた型に違和感を覚え、私のように周囲が声を上げ始めてやっと息苦しかった事に気づくような人もいる。

私もこれから子供をもつ事を考えている。未来の自分の子が男か女かは分からないけれど、その時我が子が未来を心待ちにできるような、そんな選択肢を与えられる人になりたい。