中学校からの友だち4人と酒を飲むとき、決まって「ふら子は変わっている」と言われるけれど、なにが変わっているかが判断しにくいので、自分の発言がよく火種になる。
「最近は、週一で家族会議してる」
「え???」
「家族といっても夫婦ふたりなんだけどね」と付け加えたら、「いやそうじゃなくて」と言われた。

「KPT形式でやってるんだ。Keep(やっていてよかったことや続けたいこと)Problem(発生している問題)Try(挑戦したいこと)。これらをそれぞれふたりで話し合って……」
「は???」

私と夫は毎週土曜に「家族会議」をし、思想や意識のすり合わせをする

一緒に住みはじめて、すこし経ってから大きな喧嘩をした。喧嘩といっても、私が溜め込んで溜め込んで、爆発したというのが正しくて、連日話し合いをした。そこで決定したのが、毎週土曜に家族会議をして、お互いの思想や意識のすり合わせをはかる、ということだった。

プロジェクトなどの振り返り方法としてよく用いられるKPT方式に則って、それぞれ1週間を単位に話をする。別に大層な話はまったくしていない。

例えば、Keepでは机をきれいに保ち続けたいだとか、Problemでは最近換気扇の音がうるさいだとか、じゃあ週末掃除してみようだとか、Tryでは1週間のうち1日だけ今までつくったことのない料理に挑戦してみたいだとか、そんなゆるい感じで行われている。

そして、また次の土曜日に、これはできた、よかった、難しかった、なぜ? といった話をするのだ。ちなみに、外出の予定やなにか気になった点もこのタイミングで話す。
「ちなみに夫が議事録とって、ふたりで読めるようにしてある」
「なんだって???」

正直、毎週ふたりで話し合う機会を設けることによって、格段に気持ちのモヤモヤが減った。なにか気になることがあれば、ここで言えばよいのだ。その場で言ってしまうと角がたつようなことでも、週末の会議でこれが気になるからこうしてほしいなどと伝えればいい。

これが私にとって、たいへん都合がよかった。言いにくいことも気軽に伝えやすくなったおかげで、モヤモヤを溜め込むことが減り、一緒に過ごす生活が気楽になった。

私たちはお互いに認識して、お互いを知るために「会議」をしている

案の定、私の友だちは心配性なので「細々としたタスクが重荷にならない?」と聞かれた。しかし私の場合、内容がゆるゆるで評価もゆるゆるなので、あまり気にならない。タスクは、決して目的ではないのだ。

こういうことをしたい、しようとしている、その意識を言葉にするのが大切で、それらをお互いに認識して、お互いを知るために、会議をしているのである(今まで生きてきた中で、机をきれいに保てたことがないので、机をきれいに保つという目標はすぐに破綻した。そんなこともある)。

「仕事みたいだけど、ふら子は気にならないの」と言われた。確かにこの形式は、一般的に、仕事を効率よく行うために用いられる手段だ。

しかし、一般的に仕事を効率よく行うための手段を、夫婦関係にも用いてはならないというルールはない。よいものは生活にもどんどん使っていきたい。結果として、うまく機能しているし、よい効果をもたらしているからそれでよい。「私は大丈夫、大丈夫なんだよ」と友だちに言う。

私たちは一緒に楽しく生きるため、健やかに笑うために家族会議をする

私は夫のことを大切に思っているし、夫も私のことを大切にしてくれていると思う。それでも、私と夫は育った環境も培った思想も違うし、お互い知らないことはたくさんある。一緒の時間を過ごしている限り、喧嘩することは当然あるだろう。

しかし、すれ違っても、話し合うことができる。理解できなくても、受け入れることができる。お互いのためにどうしたらいいか考えて、行動することができる。

私たちはこれからも、話し合い、考え、対処し、努力する。一緒に楽しく生きるために、健やかに笑うために。