コロナ過以前にオフィスへ出社し働いていた頃、ある出来事に辟易して1つの仮説を立てたことがある。
それは「若い女性社員が無知であると場が盛り上がる説」。
これはぜひとも仮説検証バラエティーで検証して欲しい。立証される自信がある。

「あ、もしかして○○を知らない世代……!?」

新卒1年目の新型コロナウイルス感染拡大前の世界では、一般的なオフィスで四方八方を上司に囲まれながら仕事に励んでいた。飛沫が飛ぶなんて気にもせず、仕事をしながら社員同士でよく会話をしていた。
内容は多種多様。仕事に関する話はもちろんのこと、その日のニュース、私生活で起きた出来事、取るに足らない雑談などなど。仕事の話をしている時は特に問題は起きないのだが、やっかいなのは先輩から持ち掛けられた雑談だ。

「そういえばさ、○○(昔流行ったアニメ)がリメイクされるらしいよ!」
「入社してきたときから思っていたけど△△(昭和の有名アイドル)に似てるって言われない?」
「××(90年代有名バンドの曲)がサブスク配信されててさ~、めちゃくちゃ懐かしいわ~」
先輩からアニメの話題をふられることも、芸能人に似ているねと言われることも、失礼だがぶっちゃけどうでもいい感想を聞かされることも、それら自体は何も問題ではないし、気さくに話しかけてもらえるのはむしろありがたい。では何が問題なのか。

それは、これらの会話に続くこの言葉。「あ、もしかして○○(△△・××)を知らない世代……!?」
そしてこの言葉の裏に隠された、先輩社員が当たり前のように知っていることを若手社員が知らないということをネタにして場を盛り上げたいという雰囲気が問題なのだ。

知らないフリをして、偽りのジェネレーションギャップを生み出してきた

例えば、月曜9時は街から人の姿が消えるとまで言われたた1991年の人気ドラマ「東京ラブストーリー」の話題になったとしよう。このドラマを知っているかと先輩に尋ねられた若手社員が知っていると答えれば、「へー、若いのに珍しいねー」で会話が終了する。場は盛り上がらない。なんなら盛り下がる。
一方で若手社員がそのドラマを知らないと答えれば、もう仕事そっちのけで「えー!あのドラマ知らない世代がもう入社してきちゃったかー(笑)。じゃあさ、ガラケー使ったことは?え!?ないの!?まじかー(笑)ちょっと◇◇さん聞いてよ~」と周りの社員も巻き込んで大盛り上がり。

若手社員が過去の流行りを知っていると答えるか知らないと答えるかで、オフィス内の活気は雲泥の差だ。これを経験してしまうと、知っていることも知らないと答えて場を盛り上げようという考えが働く人も少なくないのではないか。
私は実際、よく知っていることも知らないフリをして、偽りのジェネレーションギャップを生み出し何度も場を盛り上げてきた。

若い女性は社会が思うよりも無知ではないのだ

この現象は若手社員のなかでも女性に多い気がする。ここで思い出されるのは、一時期メディアでも取り上げられた女性のモテテクニック「さ・し・す・せ・そ」。これらは女性が合コンでモテる相づちの頭文字を取っている。
「さすがですね」の「さ」。「すごい」の「す」。「センスいいですね」の「せ」。「そうなんですか」の「そ」。
そして順番を飛ばしている時点でお察しかとは思うが、「しらなかった」の「し」。
恋愛においても女性は無知であることを望まれていると思うと、嫌気がさす。

これまでの時代であれば、若い女性は無知である方が好まれ、場を盛り上げたかもしれない。
だがそんな時代はとっくに終わっている。若い女性は社会が思うよりも無知ではないのだ。
若い女性も知っていることは「知っています」と堂々と言える社会を望む私は、これから先の人生で無知なフリは決してしない。