つばさ。
私の1番大切な親友であり家族。大切な宝物の思い出をくれたコ。
つーくんに運命的なものを感じた。気づいたら家に居た
幼い頃、私は犬が怖かった。
保育園に入る前だろうか、毎日のようにじいちゃんに連れられて近所の柴犬に会いに行っていた。名前はケンちゃん。ぼんやりとしか覚えていないが、きっと優しいコだった。おもちゃで遊ぶ姿が可愛くて、犬は怖くないと教えてくれた。
小学校入学と同時に家に1匹の柴犬が来た。
ケンちゃんのおかげで犬が大好きになった私は、両親によく犬のテーマパークに連れて行ってもらった。そこで、ふれあい兼販売しているブースがあった。低い柵の中に何匹もの仔犬が自由に遊んでいた。
その中で1匹だけ、隅で寝ているコが居た。そのコが、私の宝物になるつーくんだ。
柵の中に入って仔犬達を見ていると、つーくんが私の足の間にすっぽり入ってまた寝てしまった。
あまり人の輪に入るのが得意ではなく、1人でいることも多い私は、つーくんに運命的なものを感じた。可愛いなとは思っていたが、気づいたら家に居た。そこから10年間一緒に過ごしてくれた。
何もしてあげられず。「ありがとう」と言うことしかできなかった
私は、友達が少ない。小学校から帰ってきても、遊びに行くことは稀で、宿題を急いで終わらせてつーくんと遊んでいた。遊ぶというより、2人でゆっくり時間が過ぎるのを感じながら、お話していた。
中学1年の頃、いじめに遭っていた。でも、家に帰れば毎日つーくんが嬉しそうに飛びついてきてくれて「お帰り!」と言ってくれた。
私を孤独から救ってくれたのはつーくんだった。家族の前では、学校は楽しいと言っていた。でも、つーくんにはバレていたのかもしれない。気づいて励ましてくれていたのかもしれない。つーくんの前でだけは、本当の自分でいられて。2人で相変わらず、ずっとお話していた。
弟と喧嘩した時も、つーくんのそばに行けば手を舐めてそっと一緒に居てくれた。
いつも「僕が居るからね。」と言ってくれた。
高校1年になった頃、つーくんの様子が違うことに気がついた。目が少し濁っていた。
親に言ったが共働きのため、すぐに病院に連れて行ってあげられなかった。今ならすぐに連れて行ってあげられたのに。
そこから急に体が弱くなっていった。元々体が小さく、メスに間違えられることも多かったが、更に小さくなっているように思えた。10歳になった1週間後、つーくんは虹の橋に行ってしまった。最期は動けなくなった彼の姿を前に、何もしてあげられなかった。ただ「ありがとう」と何度も言うことしかできなかった。1番の後悔だ。
5年以上経っても、何度思い出しても。何度も励ましてもらったのに、私はそれ以上に愛情を返せていただろうか?
夢は夢のまま終わる方がいい、と言い聞かせていたけれど
社会人6年目になろうとしている今、私は小学生からの夢だったトリマーの専門学校に1年通うことにした。
平日は会社員、土日は学生。もちろん不安はある。でも、23歳の今しか、もう動けないと思った。高卒で何も分からないまま、自分に割り振られた会社の面接を受け、そのまま就職した。本当は動物の専門学校に行きたいと思っていたが、家の負担になってしまうので、自分の中に夢をしまった。夢は夢のまま終わる方がいい、と言い聞かせて。
できれば1年後に転職して、好きなことを仕事にしたい。そう思えたのも、ケンちゃんとつーくんに出逢えたから。2匹の柴犬が、私の人生に大きく影響を与えてくれた。
まだ元気だった頃、つーくんの最後のお風呂は私と2人だった。犬には珍しく水嫌いだったのだが、最後は大人しく洗わせてくれた。
たぶん、この経験が今回の決断に影響している。
1年後、自分でもどんな決断をするかは分からない。でも、確実に人生の中でプラスになる経験だと思う。コロナ禍で、自由に遊べない今しかできないと思った。今が最後のチャンスだと。
いつか私が虹の橋に行くそのときまで、待っていてね。ちゃんと知識を持って迎えに行くからね。