Sくん、いま、あなたはどんな気持ち?私はちょっと、ほんのちょっとだけど寂しいよ。
高校を卒業して初めて始めたカフェバイト。なんとなく続けて1年経った頃、同い年の男の子が入ってきた。そうだ、Sくんである。
正直顔は全くタイプじゃない。おまけに背も低いし。ごめんだけど興味なんて微塵も持たなかった。
私はずっと女子校育ち、今年で早9年目突入。周りからはそんなふうには見えないって言われるけど、大して男に免疫はないし、理想も高くて典型的な女子校こじらせオンナ。多分だけど自分ちょろい。
いわゆる"足"という感覚。私にとっていい気分転換になった
コロナで外出自粛が求められる今日この頃。極度の出不精、インドア派で休みの日はひたすら寝てご飯だけ食べて好きなだけゴロゴロする。そんな感じ。
別に自粛が苦ではないし、授業もオンラインになったからむしろラッキー(笑) 。まあ、こんなんだから「予定入ってるなんて珍しいじゃん(笑)」「ま、あんた暇だもんね(笑)」ってみんなから馬鹿にされる。もはや慣れっこだ。
でもね、やっぱり少しぐらいは気分は悪くなるし、そんな自分が嫌だった。
とまあ、そんな話はどうでもいいけど。
Sくんがバイト先に入ってきて1年弱が経とうとしていた頃、私はSくんに誘われて映画を観に行った。
「(私の名前)はドラえもんのイメージだから」
彼はそう言った。いや、まあよく私ドラえもん描くけどさ……どんなイメージだよ(笑)とか一人でツッコミいれてみたり。
でもまあ、全く好きって気持ちはなかったし、これっきりだと思ったんだけど。気付いたら次の約束してたよね。日光に行ってイルミネーション、夜景を見にスカイツリー、湘南ドライブ……世間ではこれをデートというらしい。
もちろん私にはこれっぽっちもそんな気持ちはないもんで、「それ恋人同士がすることだよ~」と友人には言われたが、ただ行きたいところに連れて行ってもらってるだけ。いわゆる"足"という感覚。同僚数人にはバレてしまったが、まあそんなことはどうでもいい。普通に楽しかったし、普段出かけない私にとっていい気分転換になった。
「好き」という、たった2文字を言う勇気がなかった
多分向こうは私のこと好きだった。それはなんとなく、車内で手繋がれたりほっぺムニってされてたり、なんとなーく察していたけれど。
その時は私、別に興味関心全くなかったの。ごめんねSくん。
でもね、2月に行った湘南。行こうって言ったのは私からだった。
「あ、今日Sくんバイト入ってる」「あーシフト被ってないや……」「今何してるのかな」「会いたい」
……ん?会いたい…?
私、Sくんのことばっかり気付いたら考えてるじゃん。もしかして、私Sくんのこと好き?
恋には疎いもんで、よく分からないけど、自分の気持ちを確かめるためにも湘南に行こうって言った。あわよくばそこで告白しようとまで思っていた。
でもそうはいかなかった。私には「好き」という、たった2文字を言う勇気がなかった。
悔しい。言えよ自分。そんなこんなでそれ以降出かけていない。バイトが被っても普通に喋る程度。あの助手席、私の席にしたかったのに。
元はと言えば、向こうが好意を寄せているのではと思ったときに私が聞けばよかったんだ。
「私のことどう思ってる?」って。
たったそれだけのことが女子校こじらせ女の私には難しかった。勇気がなかった。自惚れだったら嫌だし、違かったら恥ずかしいし。それを恐れて言うに言えなかった。私には恋愛不適合者っていうのがぴったりなのかもね。
ちょっと好きになるタイミングが遅かったみたい
Sくんと出かけなくなった最近、私はSくんのその優しさにたくさん救われていたことに気付いた。
ぱっと見ヘロヘロそうだしナヨナヨしてそうなのに、実は中身は芯が通っていてしっかりと自分を持っている。男気のあるその感じ、とっても好きだ。でもそんな気持ちをもう出すことはできない。
ちょっと好きになるタイミングが遅かったみたい。馬鹿みたいだよね。
彼は知ってたかしら。背の低いSくんに合わせて身長が超えないようにヒールを履かないようにしていたこと。それももはや今じゃいい思い出。
ここまでもはや失恋して元カレを懐古してるみたいな口調で語ってきたけど、バリバリ今も一緒に働いてます(笑)。
全然シフト被らないのが私は寂しい。被ってもなんだか向こうはそっけない。冒頭でほんのちょっとって言ったけど、全然そんなことなく普通に寂しいし悲しい。
Sくん、あなたは今私のことどう思ってるのかな。もう多分友達以上の関係になることはないと思うけど、それでもあなたの気持ちが気になります。
いっそ好きなら好き、そうでもないなら振ってほしい。
は~、女子校こじらせオンナ、いつ卒業できるかしら。そう思いながら、大学3年生になる。