「見た目と中身にギャップがある」
誰もが一度は言われたことがあるかもしれない。けれど、あの頃の私はそれが一番嫌だった。

「清楚でおとなしい普通の女の子」から、実際は離れた場所にいた

小さい頃からぽっちゃり体型で、小学3年生で30キロ越え。高校3年生で60キロの大台に乗りそうになって、本気でダイエットを始めた。激しい運動や筋トレをするでもなく乱れた食生活を抑えたら、4か月で私の体重は10キロ減り、平均的な体型になっていた。

女子大に入学したあと、サークルには入らなかったが、バイト先や友達の紹介で男子との出会いはあった。その中で、私はいつもこう言われた。「見た目と中身にギャップがあるね」

服のセンスに自信がないから、当たり障りのない、どこにでもいる女子大生スタイル。髪の毛も無難に茶色や黒、顔面はこれしかできないナチュラルメイク。メッセージ性も何もない、どこにでもいる所謂量産型の女子だった。そういう子が周りからイメージされるのは、「清楚でおとなしい普通の女の子」だ。でも、実際の私はそこから離れた場所にいた。

自分で言うのもなんだが、私は「清楚でおとなしい普通の女の子」ではない。高校生までデブでモテなくて彼氏ができたこともない、ただのこじらせた女子だったのだ。
そんな私が、「清楚でおとなしい普通の女の子」を演じられるわけもなく、ありのまま振る舞っていたら、いつしか見た目で判断してくる男の子が苦手になっていた。

やっぱり見た目って大事ではある。でも、嫌な思いもする

これだけ書くと、「どれだけ自分の容姿に自信があるんだ」と思われそうだけど、私には太っていた頃の記憶と痩せてからの記憶があって、男の子からの視線の差も感じたことがあるから言えるのだ。
やっぱり見た目って大事ではある。でも、嫌な思いもする。

バイト先の先輩に「小動物みたい」と言われて、しつこく映画に誘われたり。カラーモデルをしてもらった美容師と食事に行って、クリスマスイブにもデートに誘われたのに、敬語をやめてタメ口を出した途端、「見た目と中身にギャップがありますね」と言われて振られたり。
みんな、私の中身を知らないくせに、もしくは知ったら幻滅するくせに、簡単に近づいてこないでよって思っていた。

どんな見た目でも、私は私。きっと、人の中身は見た目ににじみ出る

だから私は、「自分がどう見られたいか」を意識した格好をしてみた。
ある時は、人生で一番髪を短くして、男の子みたいな服を着てみたり。またある時は、ギャル風の格好に憧れて、インナーカラーを入れてみたり。
色々試してはみたけど、やっぱり自分の好きな格好をするのが一番だなと思った。

だって、判断するのって結局他人だ。自分はこう見られたいっていう願望があったとしても、それを最終的に決めるのは他人なのだ。どんなことにおいても。それに気がついてからは、なんとなく自分のやりたいことをやったもの勝ちだと思った。他人にどう思われようが、なんて言われようが、着たい服を着て、やりたいメイクをして、行きたいところに行く。

「見た目と中身にギャップがある」。上等だ。
むしろ見た目通りの中身ではつまらないとさえ思う。どんな見た目であっても、私は私。それにきっと、人の中身は見た目ににじみ出るものだ。それは服装やメイクでは隠しきれない、表情や仕草に。
だから今の私の周りには、私の中身を好きでいてくれる人しかいない。この環境を作れたのは、ギャップがあると言われたって、そのギャップを無理に埋めようとせず、ありのままの自分でいようと思ったからだ。

この先この考えが変わるかもしれないけれど、今はとにかく、自分の好きな自分でいたい。