この3年間、家族で食卓を囲むことは1度もなかった

父とはもう3年程口をきいていない。
話さなくなったきっかけは覚えていない。母と父の折り合いが悪く、2人の会話がほとんどなくなった頃だっただろうか。自然と父との会話はなくなっていった。

父は多分、私のことを何も知らない。
高校生の時、人間関係で悩んでいたことも、第一志望の大学はどこだったかも、二重に整形したことも。
家族関係がうまくいっていないことに不満を覚えることもあった。けれど、しばらく経つと、これはこれでさっぱりしていて楽でいいかもと思い始めたりもした。

家族仲が良い友達の話を聞くと、少し羨ましかった。みんなで旅行に行って、同じ思い出を共有して、写真を撮ったり、動画に残したり。大学進学による上京で、実家が恋しいと話すのを聞いて、私には縁の無さそうなことだなぁと淡々と思った。
この3年間、家族で食卓を囲むことは1度もなかった。もちろん、旅行に行くことも。

父のことをどう思ってるのか、自分でも分かっていない

私の父はとにかく小言が多い人で、何をしていても文句を垂れていた。考え方が所謂昔の人で、掃除や洗濯などの家事はやりたがらなかった。私が塾に通うことも、大学に進学することも、あまりいい顔をしなかった。

父とはずっと口をきいていない。そんな話をすると、お父さんのこと嫌いなの?と聞かれる。そんな時は、そうかなぁ、と小さく答えて誤魔化してしまう。
正直、父のことをどう思ってるのか、自分でも分かっていない。好きも嫌いもごちゃごちゃに混ざってしまって、今の自分では何も答えられない。

ずっと文句を垂れ流している父はうるさくて煩わしい。塾のことも、大学のことも一言も相談できなかった。自分に都合が悪くなるとすぐに怒鳴るところも嫌いだ。
でも、私のことを大事に思ってくれていたのも知っている。
高校3年間、お弁当を作り続けてくれたし、仕事に行く時は毎朝、私の寝顔を見てから玄関を出ていたことを知っている。

ただ1つ、はっきりと分かっているのは、感謝の気持ちがあること

私は多分、父のことを何も知らない。
いつもどんな風に仕事をしてるのか、休日は何をして過ごしているのか、今の好きな漫画は何なのか。1つ屋根の下に住んでいるのに、全く話をしなかった3年間は、父との距離が開くのに十分な時間で。
スマホでドラクエを楽しんでいることを、お正月にしか会わないような叔父から聞いて初めて知った。

父との距離を縮めようにも、今更どうすればいいのか分からない。そもそも、自分でも父とどういう関係性を作り上げたいのか、分かっていない。今の自分では、分からないことだらけで、何かアクションを起こすことすらできない。
ただ1つ、はっきりと分かっているのは、感謝の気持ちがあることだ。私をここまで育ててくれたこと、口をきかなくなった3年間でも見守っていてくれたこと。
私を娘として愛してくれていること。

今の私は未熟すぎて素直に、ありがとうと伝えるのはハードルが高すぎる。いつか、もっと大人になって、自分の気持ちに整理がついた時、父との関係性に何か変化を起こせたら良い。

いつも、パパの洗濯物だけ適当に干してごめんね。
これが、今の私の限界である。