私は2年前の冬、通っていた全日制の私立高校から、通信制に転校した。理由は体調不良だった。

辛くて、自分は高校生だと思わなければ良い、と思うようになった

有難いことに、友達は何人かいたので学校に行けば居場所があった。そんな場所が突然なくなってしまった。転校した通信制の高校では、月に1回ほどしか行かなくていいコースを選んだ。そうすると、バイト以外に居場所がなくなり、外出することが少なくなった。そんな毎日が寂しかった。
SNSを開けば、高校に通っている友達の楽しそうな姿が画面いっぱいに広がっていた。余計に辛くさせた。
辛さを極めた結果、自分は高校生だと思わなければ良い、と思うようになった。そう思えば、華のJKライフを満喫しているみんなを見ても辛くなくなる。

何か見た目で変えられるものはないか探し始めた。
私は典型的な見た目から入るタイプ。一目見てもすぐ高校生だと思われないような……。出来れば簡単なもの……。
そうだ、髪の毛だ!ブリーチをしよう!!ピカーンと閃いた。
髪色は黒でなければならない、という校則のある高校が多い。だから、ブリーチをして髪色を明るくすれば、初対面の人にも、何よりふと鏡に映った自分を高校生だと思わせなくさせられると思った。

1回だけになったブリーチ。それでも結果は最高、大満足だった

そう思ったら行動は早い。都会にある、お洒落なお姉様が通っていそうな、でも親しみやすそうな美容院を予約した。SNSを見て、この色がいいかな、この色は似合わないかな、とウキウキ楽しく考えていた。
あっという間に予約の日になり、美容院に行き、したい髪色を美容師のお兄さんに見せた。すると、お兄さんは難しい顔をした。
「その髪色はブリーチを2、3回しないと難しいですね。予約したブリーチ1回のメニューでも出来ない事はないけどイメージとは違ってくるかな、と」

まじか……。時間的に1回しかブリーチ出来ない。
お兄さん曰く、他の少し暗めの色ならもっと綺麗に色が入って楽しめる、と言われた。
しかし、私の目的は明るい髪にすること。髪色を綺麗に入れてもらうことではない。(勿論綺麗であるに越したことはないけれど)
私は持参した写真を指差して言った。
「ニュアンスが違ってもいいので、明るいこの髪色でお願いします」
結果は最高だった。お兄さんが最初に言っていた通り、写真通りの色にはならなかったが、大満足だった。

私は何で、高校生に見られたくなかったのか。考えてみたら

その後、初対面の方に「大学生ですか?」と聞かれることが多くなった。鏡に映る自分の髪の毛は、あの時街で見たような可愛らしい色だった。気に入っていた。おばあちゃんに「雑誌から飛び出してきたみたいやねえ」と微笑みながら言ってもらえた。
続けていたアルバイトも軌道に乗り始め、プライベートが充実し、SNSを見ながら枕を濡らすことも少なくなっていった。あの時、私が思っていた理想の状態になっていた。
しかし、何というか、歯の間に食べ物が詰まったような奥歯に物が挟まったような、何か引っかかっていた。腑に落ちなかった。私は17歳で、通信制とはいえ高校に通っている。私は何で高校生に見られたくなかったのか。何でSNSの中の皆んなが羨ましかったのか。考えた。

結局、私は私でしかない。
「私」とは、高校2年生、17歳の女だ。
「私」は、髪色は気に入っていたけれど、ただただ周りの楽しそうな高校生活から逃げていただけだ。
「私」がしたい格好は明るい髪に私服ではなく、地毛に制服だった。
日中行く場所はバイト先ではなく、学校に行きたかった。結局、外見をガラッと変えても中身は何らひとつ変わっていない。

見た目だけ飾ってもダメ。中身も好きになってもらえるような人間に

私はこれから大学生になり、社会人になる。したい髪色にできなくなる時も来るだろう。服装やお化粧もしたいようにできなくなるだろう。
そんな時私はどうするのだろう。見た目ではなくて、もっと深い場所に自分を置いておかなければならない、そう思った。
見た目を飾るだけではダメ。中身も伴っていないと人からの信用はないのかもしれない。見た目だけではただの虚像だ。見た目を好きになってもらったとしても、それは虚像を好きになってもらったのであって。「私」に好意を寄せてくれたのではない、と思う。見た目も中身も好きになってもらえるような人間になりたい、と思った。

見た目関係なく、私が私でいられるような理想の人間となるために、最近私はある勉強を始めた。
得意な分野ではないけれど、なぜかウキウキしている。そう、現状を変えるにはブリーチだ!と閃いた時のように。