私の父は、家で過ごすことが好きだ。休日は、キッチンで料理をして平日の食事やお弁当のおかずを作っている。または、録画してあるテレビ番組を観たり、本を読みながらソファでうたた寝している。これが、私が大学生になってからの父の休日。

休日をほとんど家で過ごす父に、飲みに行かないかと誘ったが断られた

私が小学生のいつからかは忘れたが、父が家にいることはなかった。いろんな理由があったのだとは思うが、一緒にどこかへ出かけた記憶は少ない。

社会人になって休日を家で過ごす父に、一緒にお酒をお飲みに行かないかと誘ったことがある。周りの友達が親と飲みに行っていたから、ひとつの親孝行にもなるのかもと思ったので。しかし、「えー、家にいるー」とあっさり断られた。まあ確かに、いつも家で過ごす父だから仕方ないのだが、少し勇気を持って誘ったのに断られたから、「ちっ」と心の中で思った。

家で一緒にご飯を食べたり、テレビを観たりして過ごすが、父とどこかへ出かけたことは本当に少ない。父が外に出かけるのに付き合ってくれたのは、最近だと私の誕生日プレゼントを買いに行くのに出かけた時だ。

時間を決めて待ち合わせ、買い物に行く。お店は父が決めていたので、そこで好きなものを買っても良いという感じ。30分くらいだろうか、色々手に取り試着していた。父は店内をふらふらしながら、たまに私の近くにきて少し話し、またふらふらどこかへ行く。家の中でしか父と過ごさないものだから、外にいる時の父との距離感が何だか少し分からなかった。

私の誕生日プレゼントを買うため、仕事の合間を縫って来てくれた父

買い物が終わると、「じゃ、仕事に戻るからじゃあね」と言って去っていった。なんだ、お茶もできないのかと思ったが、父はもしかしたら私以上に、外にいる時の私との距離感が分からなかったのかもしれない。ささっと仕事に戻っていく父の後ろ姿が、何だか愛おしく思えた。

誕生日プレゼントをこんなふうに渡してくれる父は素敵だ、ちょっとシャイな感じの父がすごく私は好きだ。もう少し何か一緒にできたらなと思うが、これくらいが良いのかもしれない。私にも、父にとっても。

思い返せば、表だって一緒に何かしたことはやはり少ない。だけど応援してくれたり、何となくいつも傍にいてくれたりしている。伝えたいことはなるべくすぐ伝える、大切にしたい人のことはちゃんと大切にする、私のモットー。なにかの節目以外でも、必ず感謝の言葉は伝えているつもりだが、歳を重ねる毎に感謝の気持ちはどんどん増えている。伝えきれているだろうか、伝わっているだろうか。

実家を出た時に、父がメールをくれた。「引っ越し中?4年間ありがとうございます。父なりに楽しかったです。母はあなたと一緒に暮らしたかったと思う。そういう意味ではあなたと母に感謝です。それでは、また。父より」

どの家にも複雑なことがあるように、私の家にも少し複雑なところがあり、まあこんな感じだ。こんなことを父が思っていたことは知らなかったから、このメールを新幹線で読んだ時は涙が止まらなかった。読み返すと、今でも涙が止まらない。

その時も父に伝えたとは思うけれど、私も父と過ごした日々はすごく楽しかったし、一緒に過ごせてよかった。私の父が、父でよかったとすごく思う。

何か一緒にしようとは言いにくいけど、少しシャイな父がすごく好き

たまに実家に帰ると、やはり変わらない休日を過ごす父。私もなかなか一緒に何かしようとは言いにくいので、ソファでうたた寝している父とこっそりツーショット写真を撮った「撮らないでよー」と言われそうだから送らないが。

先日プレゼントした上着をすぐに着ていた父、目も合わせず「今の時期にいいよこれ」と言う少しシャイな父が、やっぱりすごく好きだ。いつもありがとう、どうかこれからも身体には気をつけてね。