私は、看護学を専攻している大学生です。日々、健康や病気について学びんでいます。もちろん、食事や栄養についても勉強します。肥満になりやすい食習慣、高血圧を予防する食生活、血糖値を安定させるための食事。看護師は、患者さんの食生活を改善するような業務に携わる場面も多いからです。
大学で看護や栄養について学ぶことで、自分に課した「健康ルール」
私は大学に入る前は実家暮らしで、食事は母に任せきり。栄養にも全く関心がありませんでした。しかし、勉強するうち私に変化が起きました。食べ物を見ると、目の前に病気の名前がちらつくようになったのです。こうして、私の中でにわかに健康ブームが巻き起こりました。大学1年の春でした。
一人暮らしということも手伝って、自分の健康ルールがどんどん生まれます。白米よりも玄米を食べる、野菜はたくさんの種類を取り入れる、脂肪の少ない肉・魚を摂る、糖分・塩分は摂りすぎない。必要カロリーを計算する、体重をチェックしてBMIを計算する……。
食品表示はしっかり確認して、ジャンクフードは口にしない。これを食べたら病気になるかもしれない、この成分は健康にいいのかな。この頃の私が食べ物を見て思うことは、こんなことだけでした。
こんな調子で1年ほど経ちました。食生活のおかげか、体調はすこぶる良い。体重も好ましい値をキープ。この調子でいけば、きっと病気にならないはず。私はこんなことを思っていました。このまま健康ルールを守っていこう。こう決心した矢先。私にある試練が与えられました。
病院実習は大学の講義と違い心身ともに疲れて、私は甘いものを欲した
私に与えられた試練、それは多くの看護学生の試練でもある病院実習でした。大学で受ける講義とは違って、実際に病院に行き、患者さんとお話します。忙しかったですが、楽しくもありました。病院のスタッフの方も患者さんも優しくて、充実した期間でした。
だけど、慣れない場所で学ぶというのは心身ともに疲れること。その場では元気でも、家ではグッタリという友達もたくさんいました。もちろん、私もそうでした。
長期実習が明日で終わるという日。私は友達と大学から帰っていました。私は干からびたような気分で、なんとなくイライラしていました。これから、実習の最終レポートを書かないといけないのに、やる気が出ない。疲れた、何もしたくない。その時、友達が「疲れたね、なんか甘いものが食べて帰ろうよ」と言いました。
悪魔のささやき。私たちの目の前には、コンビニ、ファミレス、ケーキ屋さん。“健康のために”と控えていた私でしたが、本当はお菓子大好きの甘党。体に良いようにとドライフルーツやヨーグルトをお菓子の代わりに食べていました。
私はちょっと迷いました。でも、この日の私は違うものを欲していました。バター! クリーム! チョコレート! 我に糖分と脂肪を! 「いいね、行こう。たまには好きなものを食べないと、やってらんない」。10分後、チョコレートパフェを友達と分け合いながら、私はしみじみ思いました。疲れた体に甘いものが滲みました。友達とのおしゃべりも楽しかった。
栄養バランスばっかり気にして、私は友達との食事も断りがちだったのです。いつもの食事が美味しくないわけではないけれど、そればっかりじゃ何かが足りない。私は復活しました。実習の最終レポートも無事に終わり、私は実習を乗り切ることができました。
私は気づいた。楽しく美味しく食べることは「心の栄養」だということ
健康は大切だけど、体の健康ばかり気にして、我慢ばかりになっては本末転倒。私は、自分が目的を見失っていたことに気づきました。今は、栄養バランスだけが食べる目的じゃない、楽しく美味しく食べることも心の栄養、いつまでも好きなものを食べられるように健康に気をつけていこうと思っています。
今の私の気がかりは、自分の健康よりも父の健康。健康診断のあらゆる数値がグレーゾーン、お腹周りは成長中。そんな父のモットーは、“太く短く生きる”です。今宵も、ビールを飲んでいるのでしょう。傍らには、塩分たっぷりのおつまみがあるのでしょう。看護師になった暁には、まず父の食生活を改善しようと思っています。
父には元気で長生きしてほしい、だからこそ、娘からの愛の鞭が必要なはず。父が呑気にしていられるのも、あと1年足らず。覚悟しててね、お父さん。