お父さん。
実は私、お父さんの差別的な発言がものすごく腹が立ちます。それは他人だったらあらゆるハラスメントで訴えたくなるレベルで、腹が立ちます。

「そういうの、言ったらいけないんだよ」と諭しても、自論を語る父

大体、夕食を食べながらテレビを見ている時にそれは放たれます。主に対象はその時にたまたまテレビに映った芸能人や街頭インタビュー等を受けた一般の方々です。
「こいつ気持ち悪いな」「障害あるんか?」「頭おかしいな」「女々しいな」「男か?」「ようテレビ出て来るなあ」「どこが良いん?」「どんな仕事してるん?」「食えない仕事やな」

そういう発言を50代にもなって平気でしてるのが呆れます。せっかくの美味しいはずの食事も進まなくなります。人権問題、バリアフリー、発達障害、LGBTQ、ジェンダーレス、仕事、働き方、等々。私が小中学校の道徳、高校の総合の時間、大学の教育心理学の授業、社会人生活、その他ありとあらゆる本やメディアの中で学んだことはいったい何だったのかと、頭がぼうっとしてきます。

「そういうの、言ったらいけないんだよ」「パワハラだよ」「モラハラだよ」
 そう私が諭しても、すぐあなたは反発して、「俺は正しい。間違っていない。常識だ」と言い張ります。延々と持論を語りだします。

そんな発言をする人間が、曲がりなりにも組織のトップに立って指示をしているのが、たまらなく許せなくて、お父さんの部下の方々が哀れに思います。

お父さんの差別発言を聞くと、小さな針で心臓を刺された気になる

そして私は思うのです。私もお父さんの言う「はみ出している」人間だから、私の考えや趣味嗜好を話しても理解されないだろうなと。
好きな俳優さんもいるけど、それ以上に好きな女優さん、女性アイドルの方が圧倒的に数が多いこと。

大好きな映画や本、ドラマには大体マイノリティー、生きづらさを抱えた登場人物がいて「私も同じ!」と共感していること。
実生活でも男らしい凛々しい人よりも中性的な男性に惹かれること。
転職2回して既に終身雇用のレールから外れていること。
転職した理由の一つにもその生きづらさが含まれていること。

確かに「はみ出している」人間は生きづらいけど、私はもうそうじゃない人生を歩もうとは1ミリも考えていません。無理に「はみ出している」部分を何とかしようと取り繕っても、どうにもならないことが分かったのです。

どうにか私なりに生きようと、日々生きています。そんな一日の終わりの夕食の時間にお父さんの差別的な発言を聞くと、たまたまテレビに映った人に対して「何て失礼な!」と思うと同時に、私も少なからずショックを受けます。小さな針でプスプスと心臓を刺してえぐられるように。

お父さんみたいな人とは結婚しないと思っていても、共通点が見つかる

私は幼い頃から常々「お父さんみたいな人とは結婚しない」と心に決めています。幅広い知識と視野を持ち、色んな考え方ができて、多様性を認め、穏やかで、決してすぐ怒鳴ったり手を上げたりしない人。

しかし、現実はそう甘くないです。付き合った人、男友達、先輩、上司。なんだかんだ共通点を見つけてしまうのです。
「あ、この自分の意見を頑なに曲げない感じ。お父さんと同じだ」
「あ、この人を見下す感じ。お父さんと同じだ」
「あ、この自分は正しいと思っている感じ。お父さんと同じだ」

 悲しいかな。父、母、私、妹という家族構成。今までの人生で一番見てきた男性は、父親のあなたです。私、あなたのせいで男性恐怖症になってしまいました。なのにあなたは平気な顔して言います。

「早く孫の顔が見てぇなあ。お前、予定は無いんか?相手おらんのか?寂しい人生だなあ」
 私は満面の笑みで、中指を心の中で立てて言い返すのです。
「は?無いですけど。それが何か?」