家から歩いてすぐのところはデパートが何軒も並んでいて、だからよく、ふらっと立ち寄ってみる。
デパコスを眺めたり、手が届かない価格帯の服屋を冷やかしてみたり。

目に入った北海道展の広告。催事が好きな別れた恋人を思い出した

その日に目に入ったのは、北海道展の広告だった。翌日から開催らしい。
宝石みたいないくら丼、写真から香ばしい小麦が香るパン、その場で食べられるまっしろなソフトクリーム。思わずポスターの写真を撮って、LINEを開いて、そこでやめた。

そのころに別れた恋人は、デパート催事が好きな人だった。
彼の家の近所にもデパートがあって、催しがあるたびにわたしを家に呼んで、2人きりの沖縄パーティーだとか、九州パーティーだとかを開いてくれた。
休日に、美味しいものを分かち合える恋人と過ごすことは、わたしの2年間ではすっかり定番のことだった。

だから、つい写真を撮ってしまって、我に帰る。もう送る相手いないじゃん。

別れを切り出したのはわたしからだった。
彼は静かに泣いていた。

たしかに好きだった相手なんだけれど、その頃のわたしには恋というものがもう重荷であって、だから彼の手も振り解いてしまった。

それでも、彼と2人で楽しんでいたデパート催事の広告を、つい撮ってしまうくらいには、彼のことを愛していた。こんな形容では、きっと彼にはわたしの想いは伝わらないんだけれど。

ちゃっかりチラシももらってデパートを後にした。

彼と別れた私は、恋に支配されることのない日曜日を過ごすように

彼と付き合っていた時、休日は大体恋に支配されていた。
彼よりもわたしの方が忙しい仕事をしていて、土日休みの彼と、日曜だけ休みのわたしにとって、唯一の休日である日曜日をまるまる彼との時間に当てることは、恋による支配に他ならなかった。

彼のことは大好きだけれども、大好きな1人カフェはずいぶんご無沙汰だったし、積読本はタワーのようになっていくし、録画したドラマも追いかけられない。

それでも、例えばデパート催事の戦利品で催される北海道パーティは、やっぱり心から楽しくて、美味しい時間だった。

彼との別れを選択したわたしは、恋に支配されることのない日曜日を過ごすようになった。
大好きだった1人カフェに毎週出かけられるし、そこで積読本を消化することもできて、ドラマもゆっくり鑑賞できる。それはそれで本当に楽しい週末で。

さて、では、北海道展が催される週末。
わたしはいつものように街に出かけて、パン屋を巡ったり本屋を巡ったりして、最後にデパートにも立ち寄った。

わたしの足は北海道展へ。これまでとは少し形の違う幸せな週末

デパ地下で551の蓬莱を買って、夜は1人で551パーティだ!とウキウキして、最後に、やっぱり、わたしの足は北海道展に向かっていた。

大好きなパン屋で買い溜めたパンをたくさん抱えているくせに、やっぱり北海道産小麦の誘惑には抗えない。揚げたてのザンギが山のように積まれている。分厚くて桃色に光る鮭の切り身が、わたしに調理されるのを待っている。

結局、北海道展でもたくさん買って帰宅した。

ちくわぱん。ザンギ。鮭の切り身。ドゥーブルフロマージュ。
ちくわぱんは明日の朝ごはんってことにして、鮭の切り身は冷凍庫へ。

ザンギと551をテーブルに並べて、ドゥーブルフロマージュは冷蔵庫で解凍中。
さて今日は551と北海道の融合パーティだ!
もちろんどれも美味しくて、おいし~、って口に出してみて、インスタにあげようかなって写真を撮ってみる。

でもやっぱり違うのは、おいしいね、って返事がないこと。撮った写真を、LINEのアルバムで共有しないこと。北海道催事ならなんで551買うんだよ!とつっこまれないこと。食後のドゥーブルフロマージュが、一切れで済むこと。

撮り溜めたドラマを観ながら551と北海道の融合パーティをすることも、それはそれですごく幸せなんだけれど。
今までとは少し違う形の幸福な週末に、わたしはどんどん慣れていくんだろう。彼は幸せかな?わたしは、これはこれで、幸せだよ。