ハンカチ、ティッシュ、お化粧ポーチ、ふわふわで可愛い寝巻き、真新しい下着。全部ボストンバッグに詰め込んで、先日新調した桜色のワンピースに身を包んだら出発だ。
この週末は、彼の家に初めてお泊まりをする。

誠実で、全てが完璧な彼に感じた「なんとなく、違うんだよな」

大学生の時に付き合っていた彼は、とても誠実な男であった。
好きなゲームが一緒で、夜な夜なSkypeを繋ぎオンラインで遊ぶ。お気に入りのFPSゲームであったが私は下手くそで、彼はいつも私を守りながら戦ってくれた。

筋トレが趣味で、毎日ランニングをしている。大学卒業後は市役所に就職予定だ。加えて料理も上手い。たまにInstagramに載せる写真は、女子のそれよりも映えた。

家柄も良さそう。見せてもらった実家の写真は、由緒正しき日本家屋。車が3台停まっても広い敷地。両親と祖父母と兄弟たちの写ったその家族写真からは、家族仲の良さが伝わってきた。
完璧だ。全てが完璧である。

なんとなく、違うんだよな。
私は言葉に出来ない違和感を、胸の奥の方に感じていた。何が違うのかは分からない。でもなんとなく、違うんだよな。

遠距離恋愛、という程ではなかった。電車に揺られて1時間半。毎日話しているのでなんとも思わなかったが、会うのは月に1度ほど。周りはみんな「おかしい!」と言ったが、特に何も感じない。私はおかしいのか?
初めてのお泊まり。これで何かが変わるのだろうか。

楽しかったけど既視感のあるお泊り。恋人として好きじゃないと思った

結論から言うと、何も変わらなかった。
昼からお邪魔して、夕飯までゲーム。彼が手作りしたお好み焼きを食べて、お風呂に入って、またゲーム。眠くなったら用意された客用布団に横になり、ゲームの話をしながら寝落ちる(もちろん彼は、自分のベッドで寝ている)。

なんて楽しい! だけどこの感じ、なんか既視感。大学の女友達と家で遊ぶ時も、こんな感じだ!
そして私は気がついた。
この人のこと、好きじゃないわ。

友達としては、大好きだ。こんなにも最高の友達はいない。
だが恋人としては、どうなんだ? この人とキスができるかと言われると、答えはNOだ。

この人なんか違うかも、と悩む全ての女性に問いたい。あなたはいつも一緒にカフェへ行く親友の、その唇にキス出来るだろうか? つまりそういうことだと思う。
恋愛経験の乏しい私には“恋慕”と“友愛”の違いがよく分かっていなかった。大学卒業後、彼は都会に残り、私は地元へUターン就職。会いに行くとなれば、片道4時間。往復8時間! たとえ親友といえども、毎週末会うのはキツい。答えはもう、決まっていた。

結婚について真面目に考えた私から、同じことで悩んでいる女子へ告ぐ

最近たまたま、この元彼と私の共通の友人に会う機会があった。
実は昔付き合ってたんだよね、とカミングアウトすると友人は苦い顔をして「彼んち、めっっっっちゃ家族仲良いから、友達としてなら歓迎されるけど、彼女となると、ね。なんか違うんだよなってその勘、当たってたかもね。将来的な面でね」と言った。

将来。彼と結婚なんて、考えたこと無かったな。
それから私は結婚について、少し真面目に考えるようになった。
結婚って何。結婚って必要?結婚を決めるのに大切なことって、何だろう?

同じようなことで悩んでいる女子たちのため、このエッセイは上記の友人の、結婚についてのありがたーいお言葉で締めようと思う。

「顔がタイプ、性格が優しい、体の相性がいい、金持ってる、付き合う理由って色々あると思うけど、結婚って別だよね。
義理の親との関係とか、子供が産まれた先のこととか、長男次男とか、総合的な判断になるじゃん? いや、親子仲が超良いのが悪いって意味じゃなくてね?
なんとなく違うんだよなって違和感、大事にした方がいいよね。仮に超イケメン金持ちでも、なんか違うと思ったらそれは、なんか違うんだよなァ」