親友がいる。一つ年下の、男の子だ。
わたしにとって「親友」という言葉は重く、扱うのが難しいけれど、親友には「親友」という言葉がぴったりなので、それを使っている。親友もそれを受け入れてくれている。

友達の友達として知り合った。初対面だったのに、なんでも話せた

大学の友達の友達、として知り合った、綺麗な顔立ちをした、華奢な男の子。
友達と、友達の彼氏の家に鍋をしに行ったときに、親友が先にいた。友達から何度か名前は聞いたことがあったので、はじめまして、と挨拶をした。

鍋を食べ終わって、友達と、その彼氏が寝静まってから、わたしたちは薄暗い部屋の中でいろんな話をした。

一緒に鍋を食べたからなのか、それとも彼の持つ雰囲気なのか、お互いに、普段人に話さないようなことまでなんでも話した。正真正銘初対面だったのに、今振り返っても不思議だと思う。

それから、親友とは仲良くなった。
親友はファッションがとても好きで、いろんなことを教えてくれた。こうやって服が作られるとか、こういう形の服にはこんな名前があるとか、そういうことを聞くのは楽しかった。親友に服を褒められると、素直に嬉しかった。

ずっと友達がいいね。男より、女より、セックスよりも、親友が好きだ

親友がわたしの家に遊びに来てくれた日、いろんな話をした。いつも、将来の話とか、夢の話とか、ほかの人には言えない話を、親友は優しく聞いてくれる。

わたしが将来についての不安をこぼしたり、どうしようもない恋愛話をするたびに、親友は真剣に聞いて、真剣に答えを考える。
わたしも、親友の大切な話を聞くときは、きちんと聞いて、ちゃんと相談に乗ろう、と思う。

「お互いがこんなに理解できるなら、付き合えたらいいのにね」と親友が言った。わたしは「そうやね」と返したけれど、親友もわたしも、お互いにまったく恋愛感情を抱いていない。

わたしたちは、根本は同じで、行動が違って、趣味や言語感覚が近いから話していて楽しい。

どこまでいってもお互い彼氏彼女にはならないし、セックスもしないし、ずっと友達がいいね、と笑っていた。
男より、女より、セックスよりも、親友が好きだ。

親友に対して抱く気持ちは恋愛感情とは異なっていて、たとえハグをしても手を繋いでも、親友は親友のままだ。それらは、ただの友愛的なスキンシップに過ぎない。

親友に「パートナー」ができてとても嬉しい。親友らしいな、と思った

恋愛にならない理由はたくさんあるけれど、一番は、多分、わたしたちが似ていることだと思う。

面倒くさいところも、精神的に弱いところも、お互いに似過ぎていて、好きにはならない。
それでも、親友のことはとても大切だ。わたしにとって、唯一の男の子の友達でもある。

大学の図書館の、一番隅の席が、親友とわたしの指定席だった。
二人で並んでそこに座って、冬の雲を見ながら、小さな声でぽつぽつと喋るのが好きだった。

そんな親友に、パートナーができた。「彼女」じゃなくて「パートナー」なんだよ、と言われたときに、親友らしいな、と思った。

親友に、そんな風によりかかれる人ができて、とても嬉しい。親友は「そっちにもパートナーができるといいね」と言いつつ、焦って探さないように、と言ってくれる。