「裏切り」というと、なにか1つ大きな出来事を想像する人が多いと思う。
誠実だと思ってた彼氏に浮気された、腹を割って話せる友人だと思っていたのに裏で悪口を言われていた、とか。私が今回話したいのは、友人だと思っていた人から受けた小さな裏切りの積み重ねである。

ひょんな事から研究室が一緒になった。これが地獄の始まりだった

彼女とは大学に入ってすぐ会い、友達になって一緒に授業を受けていた。お人形さんみたいな顔立ちで、とても可愛い子だなと思った。さらにトーク力もあって面白い。自分のような地味で暗いタイプにも気さくに話しかけてくれるいい子だな、と思っていた。

でも、友達になって1年経つと、少しずつ違和感を感じる事が出てきた。私が試験勉強を頑張っていると足を引っ張るような発言をする。めんどくさい授業には出席せず、私や共通の友人に代わりに課題を頼む。忙しいから、と言って断るとゴネてそれはそれで面倒くさい事になると想像できるタイプだったので、本当は断りたくても頼みを聞く。
その間、彼女のSNSでは楽しそうなストーリーが流れている。よくある事だが、私は裏切られたように感じた。心から友達だと思っていたから。

そんな彼女とひょんな事から研究室の班が一緒になった。彼女ともう1人(Aちゃん)の3人班だった。これが地獄の始まりだった。
まず、彼女が希望していた研究室ではなかったらしく、ハッキリ言ってやる気が無い。実験手順も、何度もやっている事なのに同じ質問をする。寝坊や遅刻は当たり前で、謝罪はするものの言葉だけ。この人達なら遅刻しても良いだろう、という慢心があるとわかる態度だった。

要するにナメられていた。どうしようもないので、Aちゃんと研究を進めていた。
Aちゃんはおしゃべり上手なので、彼女に対して不満を伝えるのが上手かった。Aちゃんは彼女を「赤ちゃん」と呼ぶ事で自分のイライラを解消させつつ、彼女に不満を伝えていた。
失礼な物言いと思う方もいるかもしれないが、Aちゃんもかなりストレスを溜めていたのだと思う。自分達を明らかに下に見ている行動をされていた中で、Aちゃんなりにユーモアのあるからかいという形で不満を伝えていたのだ。

彼女が狡猾な人だとわかっていたから。ストレートな言い方で彼女に不満を伝えると、最悪の場合泣き出してこちらが加害者の立場になってしまう事が想像できていたから。
共通の友人の話では彼女はその呼び名を嫌がっていたそうだが、Aちゃんが面白い雰囲気に持っていくのと、Aちゃんのお陰で研究が成り立っている事はわかっていたから反論できなかったのだろう。何も言えず、ただただ不満を溜め込んでいた私と違って、Aちゃんには対応力があった。すごいと思った。

卒業旅行で彼女からもらった手紙。鼻で笑って、くずかごに投げ入れた

嫌な事は多かったが、Aちゃんのおかげでなんとか研究を進めていた所、決定的な事が起こった。
大学の授業数が多いため普段はなかなか研究を進められないが、夏休みは研究を進められる絶好の機会という事で沢山実験の予定を入れていた。研究を頑張ろうと思っていた最中、彼女は一週間海外旅行に行くと言い出した。しかも、私の再試が入っている期間に。

後々わかった話だが、彼女は自分がいない方が研究が進むから遊びに行く、という考えだったそうだ。
腹が立った。自分に都合の良いように解釈しないでほしい、と思った。この人は私の事を蔑ろにしていると感じた。どうして自分も研究に貢献できるように勉強する、という考えに至らないのかとも思った。
この時、私の中で彼女は友達ではなくなった。もう、この子に自分の事を話すのはやめよう。表面上の関係で良い。そう思った。

紆余曲折あって研究はなんとか終わり、彼女と話す機会も減ったが、それでも彼女は私とAちゃんを友達だと思っているらしい。共通の友人と一緒に卒業旅行に行かないかと誘われた。ぶっちゃけ嫌だった。
当然だ。あんな事されて謝罪の言葉も貰っていないのに、行くもんか。そう思った。

でも、断れない私は行くしかなかった。Aちゃんも来てくれた。その旅行の最後で、彼女から手紙を貰った。今までの事に対する謝罪の言葉は一文で、後は楽しかった思い出が綴られていた。
変わらないなぁ。やっぱり「赤ちゃん」だ。
鼻で笑って、手紙をくずかごに投げ入れた。

彼女との経験も悪いものじゃない。人には色んな面がある

彼女からは未だに連絡が来る。SNSのいいねもたまに来る。あの手紙で今までの事を許してもらえたのだと思っているのだろう。

勝手にハッピーエンドにしないでほしい。こちらの気持ちは何も整理がついていない。こちらから何も手紙の返事はしていないのに、一言謝ったからOKだと思っていて、なんて一方的なんだろう、と思う。
彼女に不満を伝えて関係を続ける道はとっくに断たれているので、遊びの誘いがあってものらりくらりとかわして少しずつ距離をとっている。

でも、彼女との経験も悪いものじゃないとやっと思えるようになってきた。彼女との出会いは「人には色んな面がある」という事を身をもって知る良い機会だったと思う。
私は彼女の第一印象で人柄を決めてしまっていた所があった。でも、人の性格は複雑だから、この人の考え方はこう!とパターン化できるものではない。彼女だって赤ちゃんの部分は悪い面だと自覚しているから、初対面の時は隠していたのだと思う。

彼女から得た学びを生かして、出会った人の色んな面を知れるよう、仕事や趣味、どんな学生時代だったかちゃんと話を聞いて、相手を知ろうとする事。人は見かけによらない事。
改めて初心にかえって、人と話すようにしている。