私は「夏」にどうも踊らされてしまう。夏なんだから、海に行かなきゃ!だとか、友達と遊ばなきゃ!だとか。さらに異性が絡むと尚更気合いが入ってしまう。
最高の夏のローケーション。楽しむ以上に「いい人」を見つけたかった
若干10年ほど前の高校2年の夏、今まで彼氏ができた事がなかった私は、何とかして今年こそ彼氏を!と意気込んでいた。だって来年は大学受験だし。このままじゃあ、放課後の制服デートが出来なくなっちゃう。でもどうしよう、好きな人がいない。なんて何ともアホで可愛らしい悩みを抱えていたのだ。
そんな時に舞い込んできた、中学生の時の友人から、夏休みにみんなで海近くの公園でBBQするから来ない?というお誘い。どうやら友達のバイト先の大学生や、他校のメンズもいるらしい。私はその夏の香りがするイベントに飛びついた。
残念ながら、モテなかった私は、自分から行動に移さないと恋愛も何も始まらないと思い、気合いが入っていた。前日からムダ毛の処理を完璧にして、ヘアスタイルやネイルも派手にして、メイクも練習して、洋服だってこの日のために友人と渋谷まで買いに行き、夏っぽいワンピースと花柄のビキニを新調していた。
夏、BBQ、海辺と三拍子揃ったロケーションに盛り上がらないわけがない。でも今日は、楽しむだけじゃなくて、私はいい人を見つけなきゃ!という下心満載の私(あぁ、恥ずかしい)。
そこで他校の同い年の男の子二人組と自然な流れで仲良くなり、一人は彼女持ち、もう一人はフリーであることを聞き出した。
フリーの彼。OKをもらえると思い、告白も「タイプじゃない」と撃沈
もう私は、そのフリーの彼にロックオン。私の彼氏作りに協力的な友達も、いいじゃん。という目を向けてくる。見た目も普通、性格は面白みには欠けるけど優しそう。
よし、この人のこと好きになろう!と失礼極まりない思考で好きな人の確保には成功。あとは想いを募らせて、告白するだけ。メールアドレスを交換し、何とか二週間後に二人で映画に行く予定を取り付けた。
恋をしている自分に酔っていた私は、迷うことなくその約束の日に告白した。間違いなくOkもらえると思っていたが、人生初めての告白に、心臓が飛び出るくらいドキドキしたし、ワクワクもしていた。でも、返ってきた言葉は
「ごめん。付き合うのは無理。君のことタイプじゃなくて、もっとナチャラルな人が好きなんだ。」
自意識過剰でお気楽な私は、振られたということに拍子抜けし、はっきりとタイプじゃないと言われたことに深く深く傷ついた。
夏の恋愛は私にとって大きな挑戦であり、大きな失恋になった
こんなに勇気を出して、気合いを入れたのに、皮肉なことに私が選んだ男子は、私のように無理してゴリゴリに着飾った女子よりも、きっと素で整っているような、可憐な美少女系が好きだったのだ。こんな恥ずかしい思いをして、もう一生立ち直れないと思った。
友達に振られたという報告をしながら、わんわん泣き、あんな男こっちから勘弁!だなんて言っていたけど、あんた出会って数週間で適当に告白して、相手のこと何も知らなかったくせに、と友達も思っていたに違いない。
それでも、その時まで浮いた話が全く無かった私にとって、この恋愛は大きな挑戦であり、大きな失恋であった。しばらくしたら、笑い話になっていたけれど。
現在、20代後半にもなると私も友人たちも、夏は暑いし、肌の天敵の日差しが怖くて外に出たくないだとか、日本の海じゃなくて、どこか異国の綺麗なリゾート地に行きたいだとか、そんなことばっかり言って。
あの時の夏の輝きはもう眩しくて、耐えられない。
もう「夏」に踊らされて、あの夏のように、前のめりになることなんてありませんように。
夏になると必ず思い出す、私のしょっぱくて、香ばしい私の思い出。