"世界を変えたければ環境を変えろ"
逆も然り。
"環境を変えれば世界は変わる"
そんな言葉を間に受けて、26年間住んだ大阪脱出計画を企てたのは1年前の今のこと。

精神的にも身体的にも疲弊し切った1年前の私は、とにかく何かを変えたかった。
変えたかったと言うよりも逃げたかったが正解なのかもしれない。
思い描いていた未来と全くかけ離れた現実に、体も心も弱り切って普通の生活が出来なくなった自分に、そんな私を心配そうに見つめながら優しく声をかける周りの人間たちから。

しかし、現実問題新生活を始めるにはお金がない。
加えて引っ越してマンションの契約なんてしようもんなら、当時無職の私は審査も通らなければ、家からの外出すら報告しなければならないこの状況で、両親の許可も降りないだろう。

それでもどうしても家を出たい。
そうしなければ私の世界は変わらない。
そう思い込んでいた私が絞り出した唯一の方法は、リゾートバイトだった。

それならば、住む場所も確保できる上に人との共同生活が可能だ。
その上お給料まで出るなんて素晴らしい環境すぎないか！
安直な考えだが、当時の私にとっては精一杯踏み出したつもりの一歩だった。

場所は出来る限り限り遠い場所が良かった。なんとなく逃げ切った気がするから。
そんな理由で行き着いた先は、沖縄本島から更に離れた石垣島。
みんなも「いい気分転換になるかもね」と、背中を押してくれた。

刺激的な毎日。でも、変わってほしかった部分は何も変わらなかった

"自分を変えるんだ！"
そんな思いを胸いっぱいに出発した私を迎えたのは、優しい島民の人たちと、今までしたことのない生活だった。

大阪は毎回逸れていく台風も、ちゃんと毎回空の上を通っていく。
日常だったはずの電車移動や買い物が、石垣島では逆に非日常だった。
そんな刺激的な毎日にウキウキする反面、1番変わって欲しかった部分が何も変わらなかった。

私は高校生の頃から摂食障害でごはんを一人前食べることが出来ない。全く食べないか、たくさん食べて戻すかのどちらかだ。

友人達と食べている間は何も思わないのに、1人になった瞬間、大量に食べては戻すを繰り返してしまう。人といる間はちゃんと食べることができるのに、1人になった瞬間、猛獣に変身してしまう。

だからあえて共同生活の寮を選んだし、1人にならないよう出来る限り島の人やアルバイト先の人たちといる時間を長くした。それでも私は食べる欲求に勝つことが出来なかった。
我慢できたのは最初の2日ほどで、そこからは一瞬できた1人の時間に食べては戻してを繰り返した。

結局、島に来て一1週間たたずして再び食べれない生活に戻ってしまった。
なんのためにここに来たって、そんな食べれない自分を変えるためなのに。
みんなに大見栄はって、「もう大丈夫！私、変わるから！」なんて言い切ったのに、結局何も変わらなかった。

自分の中ではここに来たのは最後の砦だったのに。
環境を変えれば何かが変わる。
その言葉を信じ、やっと辿り着いたこの場所で、何も変わることが出来なかった自分に大きく絶望した。
もうこれ以上生きて生きていく方法がないんじゃないかな。
本気でそう思った。

「環境を変えたって何も変わらない」そう考えていた私に伝えたいこと

結局、体調が戻らなかった私は契約期間を満たすことなく1ヶ月弱で大阪に帰り、再び元の日常に戻った。
結局環境を変えたって何も変わらない。
そんな捻くれた考えで頭をいっぱいにして大阪に帰った1年前の私に、一言伝えたい。

"あの時、思い切って飛び出たから新しい自分になれたよ"

大阪に帰った1ヶ月後、石垣島で出会った仲間達と縁あって共同生活を始め、その仲間達の温かいサポートもあり、あれだけ食べては戻してを繰り返していた自分が別人のように、普通の食生活が出来るようになった。

一切食べれなかった、おやつまで毎日食べてしまうぐらいにだ。
あの日から私の世界は自分でも驚くほどに猛スピードで変わっていき、食べれないが故に離れていた仕事にも今では復帰している。
更にはその仲間達を追う形で、東京での一人暮らしを始めた。

1年前の私は、こんな未来を想像しただろうか？

想像を遥かに超えるキラキラした生活を送れているのは、言うまでもなく、1年前の私が大阪を飛び出す決意をしたからだろう。
島での生活は残念ながら、うまくいかなかったけれど、飛び出すことがなければその後の大きな変化もあり得なかった。

環境を変えれば世界を変えるなんて言葉は嘘っぱちだ！なんて思ったけれど、今こうして想像もできなかったような世界で暮らしている。

去年の私よ、未来を夢見てもがいてくれてありがとう。
ちゃんと世界が変わったよ。