はじめて本物のカメラマンに写真を撮ってもらったあの夏。ぎこちないポージング、口角がうまく上がらずニタァっとした表情の写真も、今ではいい思い出。

周りから「未来のことをもっと考えるべきだ」と言われ…不安になる

モデル事務所のオーディションに挑戦をした2020年、夏。ずっと匿名にこだわってSNSを使い、ひっそり隠れて生きてきた私が、表に出ることを選んだ。

年齢的にも、今から芸能の世界は厳しい。もっと、若い時に思い立ってたら良かったと思うこともあるが、「今日が一番若い日」なんだ。今という瞬間が一番若い。

「今から芸能なんて、婚期逃すで?」「出産適齢期すぎるよ、いいの?」「真面目に働いて、老後資金貯めないと、ヤバいよ?」世間の声は優しくない。結婚、出産、子育て、老後、未来のことをもっと考えるべきだと言われる。だから私も悪い想像して、不安になることだってこれまで何度もあった。

結局、これといって売れず、年齢だけ重ねて、気づけばアラフォー。貯金なし、独身、子なし、老後資金ももちろんなく。芸能の世界を諦めて、40歳から真面目に働くことを選ぶが、なかなか職が見つからず。低賃金で働き続け、極貧独居老後で最期は孤独死。そんな想像をしたことがある。

何を選んでも「後悔」する日はあるし、幸せを感じるときもあるだろう

私たちは、いつも未来を気にして生きている。今から婚活しないと、いつまでに出産しないと、老後資金2,000万貯めないといけない。そうしないと、不幸になると言われているように感じる。

この考えが間違っていると思わない。きっと、どちらかといえば正しい。この道を辿れば、だいたい幸せになれると、先人が教えてくれているのだから。

世間の「こうしたほうがいい」を聞かずに、自分の道を進んだら高確率で後悔する。けれど、世間の常識に従って生きても、どこかで、何かを後悔する。思いついたことをしなかったことに悔やんだとき、常識に沿って生きても不幸だった、あるいは、思ったより幸せになれなかったとき、きっと後悔する。

何を選んでも後悔する日はあるし、不幸だと思う日もある。もちろん幸せを感じることもあるだろう。自分の意見を押し通して選んだ結果不幸だった場合と、周りの意見を尊重して選んだ結果不幸だった場合、後者は、かなり周りを恨むことになる。

自分の身に起きた不幸を「周りのせい」にすることは二度としたくない

大学進学をしたかったが、自分を意見を押し通せず進学を断念した学生の時、周りを恨んだ。高卒でそれなりに平穏に生きていれば問題はなかったかもしれないが、不幸が立て続けに起きた結果、「あの時、何が何でも進学していれば」「そう選ばざるえないようなことを言った周りが悪い」そう思ったことがある。

“自分の身に起きた不幸を周りのせいにする”、こんな経験は二度としたくない。自分の選択、行動、結果に責任を持つことは荷が重い。何が起きても言い逃れはできないし、結果が出なければ「言ったじゃないか」「忠告したよね」と追い打ちを掛けられる。それでも、私はあの夏、オーディションに応募した。

今年の春から事務所に所属して、人生がまた一つ面白くなった。絵もまた描き始めたら、ギャラリーの案内が来るようにもなった。まだまだ名前が売れてないから、経済的な問題も大きいままだけれど、思うようにいかないことも面白いと思える。自分で選んだ道だから「このままなんて嫌だ」という一心で、結果を出そうと一生懸命になれる。

学生の頃、進学できなかったことを後悔したけれど、そんな過去があるから今の私がいる。どの道を選んでも後悔すると思っていた時期があるけれど、今は違う。どの道を選んでも結果、私は幸せになるんだ。きっと、このエッセイを読んでくれたあなたも。