夏ってなんだかワクワクする気持ちになるのは私だけだろうか。

それは太陽が見えている時間が徐々に長くなって、動くことができる時間が増えるからなのか。小さい頃から夏休みという1年で最も長い非日常が用意されていたからなのか。

ゴールデンウィーク頃からパキッとした青空が窓越しに広がって、そこから、微かに新緑の香りを風が運んでくる。そんな気持ちの良い日がやってくると「いよいよ夏だな~」と心が躍るのだ。

ここのところ、私の家の窓から、夕方になると空高く飛んでいる飛行機を目にする。コロナ禍で専ら家に引きこもることが多くなったからか、「あの飛行機に乗ってどこまでも飛んでいきたいな」と心底思うのだが、そういえば1人で初めて飛行機に乗ったの は高校2年の夏だった。

日本以外の景色を見てみたい。私が選んだ先は南アフリカだった

高校に上がったと同時に、隣のクラスの子が留学に行ったらしいよ、と話を聞いてから海外に行ってみたい、日本以外の景色を見てみたいという気持ちがむくむくと湧いてきたことを覚えている。今いる場所よりずっと遠くから、自分のいる場所を見たかったのだった。

東日本大震災をきっかけに被災地へのボランティアを経験した直後だったのもあって、インターネット検索で「高校生 海外 ボランティア」とかけて夜な夜な調べていた頃のことは記憶に新しい。

調べていたら、一番気になった団体がいくつかの場所に高校生を送っていることを知った。近いところだと中国や東南アジアとかもあったし、行き先としてよく選ばれるアメリカやイギリスももちろんあった。

どこに行くにしても私にとっては大冒険。
それでも、この経験を人生の中で忘れられない最高の挑戦にしたいと決心した私が選んだ先は、日本の裏側である南アフリカだった。

私の挑戦を両親は受け入れてくれた。私は大きな冒険をしに行くのだ

私の両親は良くも悪くも幼い頃から放任主義なところがあって、私のことを過剰に心配することはなく「なんでも1人でやってみなさい」みたいな感じだったので、人生最大のこの計画を受け入れてくれた。

南アフリカまでの1人飛行機。途中のシンガポールで乗り換え。6時間ほどの待機時間。
初めてにしては大きな挑戦すぎた、と行くことを決めてからちょっぴり後悔したが、ワクワクの方が大きかった。

通常の夏休みより少し早く学校を休んで向かう非日常感も、私の興奮を駆り立たせたのかもしれない。私はこれから大きな冒険をしに行くのだ、と。

「やってやるぞ」飛行機に乗る時、毎度その時のエネルギーを感じる

日本を経つ日はジリジリと太陽が照りつける暑い日で、両親が空港まで送ってくれた。アイスコーヒーを片手に両親が搭乗手続きをしてくれたわけだが、緊張で胸が高鳴った。「もうこれでしばらく日本という国には来ないんだ」と思うと不思議な気持ちだった。

時間になりゲートに向かう私に両親が手を振って、「気をつけて」と言ったその言葉はなんだか寂しい気持ちにさせたのだが、飛行機に乗るとそんな気持ちも一転、「やってやるぞ」みたいな強い闘争心に変わっていった。

それから飛行機に乗るたびに、その時に感じたエネルギーを感じる。
「私はこれから大きな挑戦に向かって強い気持ちで行くのよ」と。
今年の夏は飛行機にさえ乗れる気がしないが、その強い気持ちを忘れずにいたい。