2020年の夏、高校の同級生3人で占いへ行くことがあった。その日は写経体験をするために京都のお寺へ行き、その後はみんなで恋愛や仕事の話に花を咲かせていた。その流れで、占いに行ってみようということになった。

将来に不安を感じていた私は、前向きな「占い結果」をすっかり信じた

そこは雑居ビルの一室で、待合室には胡散臭い塩が大量に置かれていた。占い師はまず生年月日を書くように指示し、「何を占いますか?」と尋ねた。

占いを信じていない私は、大雑把に今後の人生の進展について、尋ねてみることにした。古そうな本をペラペラとめくり、生年月日から導き出した数列にあたるページで、占い師は手を止めた。「2021年からの10年間を、今年の年末までに計画立てると、その通りになりますよ」と占い師は言った。

今から考えたら、何とまあ大雑把な鑑定である。しかし、前向きな鑑定に将来に不安を感じていた私は、すっかり信じてしまった。

だから、その年末に留学先のスイスで、忘れることなく10年の計画を立てた。月毎にびっちりと。内容は「2021年の1月はゆっくり大学院の課題勉強をする。2月は友達と山登りに行く。3月には大事なオーディションに受かる」といった感じである。

2021年の1月から、さっそく「想定外のこと」が起こった

しかし、明けた2021年の1月は、さっそく想定外のことが起こった。同居人がコロナに感染し、自己隔離しなければならなくなったのだ。年末も出かけないで我慢していたのにどんな仕打ちかと、かなり落ち込んだ。身近にコロナの感染者が出たのも初めてのことで、感染してしまっていたらどうしようと不安で堪らなかった。しかも、そのことで友人と少し揉めてしまい、二重にダメージを受けた。こんなことは計画していない、全くの裏切りである。

2月はそのせいで気が病みそうになり、予定を早めて日本に一時帰国することにした。しかも、ちょうどイギリスで変異株が流行し始め、諸国の出入国に関する規定がどんどん厳しくなり、あまりの渡航の難しさに半年休学することにした。

さらに、飛行機の乗り換えがうまくいかず、関西空港まで行く飛行機に乗れず、止む無く成田空港行きの飛行機になってしまった。到着から入国のために検査やらで拘束され、3時間後にようやく出た時は、大阪から東京まで車で迎えに来てくれた両親が待っていてくれた。

その後は、経験のないストレスの過多で体調を崩し、1週間ほど寝込んでしまった。

3月はノートパソコンを買ってみることにした。大学も教育実習も大学院までも、スマートフォンと学校で借りられるパソコンだけでどうにかやってきたが、やっぱり不便だったのだ。自前のパソコンの、何と便利なことか。

4月には思い切って髪の毛をオレンジ色にしてみることにした。美容院でひとまず全体をブリーチし、その後鮮やかなオレンジ色を入れ、私の頭は見事なにんじん頭になった。家に帰ると母も姉も私の頭を見て「ぎゃあ!」と叫んでいたけれど、「黒髪よりも似合ってる」と言ってくれた。

髪の毛の色を鮮やかにするだけで、こんなに楽しい気持ちになるんだったら、もっと早く染めておくんだった。ちなみに元々の計画では、2022年の8月に留学が終わるまで伸ばし続け、バッサリ切ってヘアドネーションし、派手に染めるつもりだった。すっかり前倒しである。

5月に入ると我慢できなくて、両耳に一つずつピアスの穴を開けた。結婚するまでは我慢しよう、自立して稼ぐようになるまでは我慢しよう、と思っていたのが驚きの変化である。父と兄には反対されていたので、黙って開けてしまった。

今の私は昨年末に期待していた計画とは、全く違う毎日を過ごしている

他にも、来年の夏まで住もうと契約していた学生寮が夏で閉鎖になるとの連絡を受けた。地味な不運が盛り沢山である。

今の私は、去年の年末に期待していた計画とは、全く違う毎日を過ごしている。当たり前である。これまでの人生が想定外の連続であったように、これから起こることも想定内であるはずがない。

期待は裏切られる。良くも悪くも。人生は自分の選択によって決まっていく。古ぼけた本に書かれた運命なんて、夢物語である。