理由なんてたくさんある。一重まぶた。丸顔。猫背。脚が太くて短い。そのくせ胸は小さい。骨太で胴長。若干の地黒。爪は丸いし、眉毛が薄い。

中でも一番のコンプレックスは、腕とおでこ。一番が二つもあるのが問題。鮫肌と富士額。スベスベの腕を惜しげもなく出したノースリーブの服に、カチューシャで潔く丸いツヤツヤのおでこを見せつけるお姉さんは、視界から消えるまでつい目で追いかけてしまう。まるで二択を全部間違えたみたいだ。人と比べて自慢できるところなんて一つもない。自分に自信を持てない理由なんて、挙げたらキリがない。

人と比較する度に自分の嫌いなところが見え、変わるきっかけになった

高1の初夏のこと。体育祭のペアダンスで、背の順でクラスのかっこいい男子とペアを組むことになってしまった。寝癖を隠しきれないボサボサ頭なんかと手を繋がせるのが申し訳なくて、人生で初めてヘアアイロンを買った。

高2の秋のこと。修学旅行の自由行動で、分厚いメガネ女と2日も一緒に行動し、思い出の写真として映り込んでしまうのが申し訳なくて、人生で初めてコンタクトに替えた。

人と比較する度に自分の嫌いなところが一つずつ見えてきて、その申し訳なさが自分を変えるきっかけとなってきた。

人生には、分岐点がいくつもある。社会人になる前に、彼氏と別れてしまったことも、その一つだったかもしれない。あの時、こうしておけば。あの時、彼氏と別れなければ。別の職場を選んでいれば。あの人に誘われたご飯を断らなければ。あの時の二択で別の道を選んでいれば、今頃恋が始まっていたかもしれない。

4月1日生まれの私にとって、新年度を迎える誕生日が、人生の節目

余談ではあるが、私は4月1日生まれだ。新しい年齢と共に、新しい年度を迎えてきた。私にとって誕生日が、人生の節目だった。23歳、社会人2年目になったら、一歩踏み出そう。新しい恋への第一歩、それは“マッチングアプリ”を始めるしかないと。

2020年4月1日。23歳。1度目の緊急事態宣言発令の約1週間前だった。外出自粛。仕事も休業になった。ただ毎日を、生きるためだけに生きていた。この先どうなるのかわからない。友人に会いたいけれど、会えない。ましてや、知らない人との接点を持つなんて。このまま一生出会いなんてないのか、なんて漠然とした不安も抱えながら、それどころではない状況を過ごしていた。

宣言が明けても、なんとなく新しく何かに挑戦する気持ちは起きずにいた。今あるこの生活を続けること、守ることの難しさを、痛いほど学んだから。

年が明け、2度目の緊急事態宣言が出された。あと3ヶ月で、24歳になる。人生でたった一度しかない23歳を、楽しめたのかな。24歳こそは。24歳を迎える時に、どんな世の中、どんな自分でありたいか。あと3ヶ月もある。世の中も、自分も、変わるには十分。

人生は二択なんかじゃなかった。たくさんの選択肢が見えていなかった

自粛期間を利用して、動画サイトで美容アカウントを漁った。そこには、かつて私と同じ悩みを抱えていた、綺麗な人がたくさんいた。

脚が痩せないのも、姿勢が悪いのも、胸が小さいのも、今までの生活の積み重ねという因果関係があり、これからの生活の積み重ねで変わると学んだ。

顔のコンプレックスも、好きな顔への近づき方、自分の顔のパーツの優れているところを見つけることができた。人生は、二択なんかじゃなかった。たくさんの選択肢が、見えていなかっただけなんだと。

そして今、3度目の緊急事態宣言。24歳になった今、好きな人ができた。某6人組男性アイドルのメンバーで、出会いは動画サイトだった。今の男性って、腕も脚もツルツル、お肌もツヤツヤで、驚いた。

疑似恋愛の対象だけでなく、美意識の目標、原動力にもなる彼らに夢中だ。綺麗への努力を怠らない彼らを尊敬し、彼らを好きだと胸を張って言える自分になりたい。申し訳なさからではない、初めてポジティブな努力ができるようになった。

恋が始まる? 始まらない? 人生は、二択なんかじゃない。