「恋が始まらない理由」。このエッセイの募集テーマを見て、真っ先に浮かんだのは高校時代に片想いしてた彼。

部活が同じで、2年生と3年生で同じクラスだった。背が高くて、優しくて、面白くて。たまにムカつくこともあったな。あと、私が言った些細なことを覚えていてくれたり、クラスで一緒にいたグループからハブられたときも「なにがあった?」と気にかけてくれたり。

彼にとって、ちょっとしたことかもしれない。だけど、私にとってはとても嬉しかった。気にかけていないようで、気にかけてくれていたんだ。見ててくれたんだ。そう思えた。
彼に関する思い出がいっぱいある。
書けば書くほど、溢れ出てくるし、思い出す。

彼と知り合って気がつけば、私はずっと目で追いかけていた

彼を知ったのは、梅雨の真っ只中。歯ブラシを片手に、流しの前に並んでいた時に声をかけられたのだ。当時の私は彼のことを知らなくて、悪気もなく「名前なんて言うの? 何組?」と言ったことを今でもよく覚えてる。

彼は私のことを知ってたのに、だ。それでも、彼は親切に教えてくれた。3組の彼と5組の私。普通なら接点のないクラス同士。運がいい事に、2クラス合同でやる授業は一緒だった。体育はもちろん、レベル別に分けられた数学と英語。芸術選択。そこには必ず彼の姿があった。席は離れていたけど、彼の後ろ姿を見ながら授業受けていたな。

部活以外で関わる機会があったおかげで、話すようになったし、廊下で会った時も手を振り合ったり。気がつけば、ずっと目で追いかけていた。姿を見れただけで、キュンと胸が高鳴って、目を瞑れば彼の姿が浮かび上がって。

あ、好きなんだな。彼のことが好きなんだ。自分の気持ちを自覚するには、時間はかからなかった。少しでも多く話すきっかけが増えるように、彼が好きって言ったものは見たり聞いたりしたな。

野球が好きで、『MAJOR』を全巻持っていると聞いた日には『MAJOR』を1巻から読み始めた。「今、どのへんまで読んだ?」「〇巻の~~~まで、読んだよ!」「あの辺か。あの後さ~~」と、どこまで読んだか進捗報告をしながら、部活の片付けをしてたこともあったな。たまに、キャッチボールもした。

振られたら、関係が壊れたら…と言い訳をして「告白」できなかった

少しづつ彼のことを知って、私なりに距離を縮めて行った。だけど、告白することはなかった。否、できなかったと言った方が正しい。

理由を簡単。告白する勇気がなかっただけ。振られたらどうしよう。この関係が壊れて、今みたいに話せなくなったらどうしよう。壊れるくらいなら、今のままでも……。色んな言い訳をして関係を変える、1歩を踏み出せずにいた。

もし、あの時。告白をしていたら。付き合えていたら。今とは違う未来が待っていたのだろうか。今でもそう思うことがある。

そんなこんなで、告白出来ずにいた2年生の秋頃。彼に彼女ができた。
相手の子は、私と小中が同じ1人で、笑顔が可愛い子。彼に彼女ができたことによって、必然的に失恋した私。大失恋だ。

心に大きな穴が空いて、泣くことすらできなかった。目の前が真っ白になって、何も手につかなかった。彼に話しかけられても素っ気ない態度を取ってしまった。廊下やSNSで2人の姿を見ると、ズキッと大きな針が刺さる感覚に襲われて。
彼から彼女の話を聞くたび、勝手に心を痛めて無理矢理笑顔を作って聞いてたな。

告白する勇気すらなかったのに、勝手に傷つくなんて。彼女ができたから早く諦めないと。
そう自分に言い聞かせた。諦めなきゃ。諦めなきゃ。諦めなきゃ。諦めなきゃ。

でも、出来なかった。諦めることができなかった。ことあるごとに頼ってくれるのが嬉しくて。話せるのが嬉しくて。くしゃっと笑った笑顔が好きで。諦めるなんてできなかった。

「告白しないの?」と友人たちに聞かれたことがあって。その問いに私は首を横に横に振った。「好きな人が幸せならそれで良い」なんていい子ちゃんぶった。ああ、なにやってんだ。私の天邪鬼。

高校を卒業して4年経つけど、私はいまも彼を目で追っている

高校卒業して、4年。別々の道を進んだ私たち。時間の流れとともに、忘れられるかなと思ったけど無理だった。だって、今でも彼のことを思い出すし、SNSで2人の姿を見ると胸が苦しくなる。ああ、まだ好きなんだなあ。そう思う。 

この長い片想いに終止符を打つには、告白するしか方法はないと最近確信した。でも、なんて伝えていいのか分からない。シンプルに「好き」で良いのかな。

でも、告白するなら私の最高の姿で告白したい。そのために私は自分磨きをする。彼の瞳に最高の私が映るように。今できることを頑張ろう。

私がそう思えるようになったのは、このエッセイに出会えたからだ。かがみよかがみが私の背中をポンッと押してくれた。

6月は彼の誕生月。今年は「誕生日おめでとう」ってLINEしようかな。