2019年6月、私は初めてマッチングアプリを始めた。
社会人になったばかりの私は、昼休みが辛かった。なぜなら、一緒に昼ごはんを食べ始めたメンバーの、彼氏がいる同期に明らかなマウントを取られていた。私は「彼氏がいれば、何か変わるかもしれない」と強く思った。
その頃、以前に大学の友達が勧めてくれたマッチングアプリの存在を思い出した。取扱説明書を読まないで行動してしまう性で始め、まさかの間違えてスワイプしてマッチングした人と会うことになった。
そんな意図しない偶然から出会った彼のことを、2年経った今でも思い出してしまう。

「彼さえいてくれれば」と思えるほど、キラキラと充実感に溢れる日々

その彼とは、出会って3日連続会って、その3日目で付き合うことになった。最初は不安を抱えて会ったものの、とても優しくて話しやすい人だった。そして、不思議なくらい私のことを好きでいてくれて、すぐに仲良くなっていた。
出会ってから私の憂鬱な毎日は一変して、キラキラした充実感に溢れた。例えば朝に早起きしたくなるような感じだったり、仕事で嫌なことがあってもすぐに立ち直れたり。完全に私は彼に甘えていた。
そして、学生時代からずっと憧れていた「彼氏と花火を見に行く」を経験した。とても大きくて迫力のある花火を寝転びながら見ていた。この時、私は学生生活の中で経験できていなかったことを全て経験できたような気持ちになっていた。
そして「彼さえいてくれればいい」と本気で思うようになった。

しかし、別れの転機は突然やってきた。彼は東京で就職することになったのだ。そのため付き合って3ヶ月で遠距離になった。退勤後にご飯に行くような生活は無くなり、とても寂しい日々が続いた。電話でコミュニケーションを取るものの心の距離が離れていき、ついには音信不通になってしまった。
久しぶりに連絡が取れた時、彼は「大学時代に好きだった人から告白された」と。その時、私はお互いのためにも別れた方が良いと決断した。前向きな理由で別れることになった。

切り替えようと行動するほど、「好き」という気持ちがわからなくなる

別れた後にはお互いに知っていたSNSは遮断され、完全に連絡が取れなくなった。非常に潔く遮断されてしまったため、今まで不思議なくらい優しかった「不思議」の違和感について深く考えてしまった。
「本当は、私のことなんて最初から好きじゃなくて、都合のいいような存在が欲しかっただけなんじゃないかな」と。それを言うなら、私も同じことをしていたのかもしれないという反省も感じた。

だからこそ、他に夢中になれるものを必死に探した。新しい趣味を見つけようとしたり、新しい恋人を見つけるために毎週のように新しい人に会ってみたりと。でも「好き」という気持ちがわからなくなっていた。だから、あの時のように楽しい思い出なんか作れずにいた。
しまいには「コロナ禍」になった世の中。気軽にどこにでも行けなくなってしまった。その時、毎日のように彼との思い出がふとした時に出てきた。私の心の中に住み着いてしまった2019年夏のあの時の彼。

今ではコロナ禍で気軽に思い出を作れないことを言い訳にして、私は楽しかった時の思い出と共に生きてしまう。今年こそ、新しい恋人と花火を見に行きたいと思っていたのに。