「女子は生徒会長なんてしなくていい。リーダーに向いてるのは男子だから、人気のある男子に生徒会長をさせて、あなたは副会長として補佐すれば良いのよ」
高校生の時、部活の顧問から言われた言葉であり、私がジェンダーについて考えるきっかけにもなった言葉。
顧問の偏見が、私にジェンダーについて考えるきっかけをくれた
私は高校1年生の時から生徒会に所属していた。学年が上がり、3年生になると生徒会長に選ばれた。
中学生のときも生徒会に関わっていたけれど、高校の、しかも生徒会長という立場は初めてで自分が思っていた以上に大変だった。
学校の行事運営や生徒会の組織運営などでは、自分が至らないせいで周りに迷惑をかけていたかもしれない。組織内の連携ミスが起こったり、うまく生徒会をまとめることができなかったりというトラブルが続き、自分がリーダーとしてどうすべきか、どうあるべきかなどを毎日自分なりに模索して、懸命に生徒会長を務めようとあがいていた。
生徒会長に就任して何ヶ月か経った頃、部活の大会出場のために遠征をすることになった。遠征先でバスに乗ったとき、隣に座ったのは顧問の先生だった。
バスの中では、たぶんいろんな話をしたと思う。しかし、私が覚えているのは冒頭で紹介したあの言葉だけだ。衝撃的すぎて、自分がなんと返したのかすらも正直覚えていない。
ただ、顧問の話を聞いている間、ずっと悔し涙を堪えていたことだけは覚えている。
リーダーとしてどう動けばいいか、というアドバイスすらもらえない。アドバイス以前に、あなたは「女子」だから生徒会長やリーダーには向いていないという顧問からの明確なメッセージ。
顧問の偏見が、私にジェンダーについて考えるきっかけをくれた。
ジェンダー問題の知識を学びたいと強く思い、有名女子大へ進学を決意
この言葉をきっかけに、私は大学でジェンダーについて学ぼうと決めた。専攻もしくはリベラルアーツ、もうどんな形でもいいからジェンダー問題に関する知識をちゃんと学びたいと強く思ったから、私は有名な女子大に進路を決めた。
その大学はジェンダーに関する授業が多いだけでなく、女性リーダーの育成にも力を入れている、とHPに書いてあった。私の地元から目指す人はそうそういないし、私自身も「偏差値届いてないから無理っ!」と思って視野にもなかった大学だったけど、母の薦めもあって受けることにした。
実は、受験に向けた準備・対策を進めていくときも、他の先生から理解を得られずに少し苦労したことがあった。「顧問の言葉をきっかけにジェンダーについて考えるようになり~」と志望理由を話せば、ある先生からは「でも、日本で生活してて男女不平等なんて感じることないしなぁ」と言われ、女性の先生にも「顧問の先生は、きっとFranちゃんの為を思ってその言葉を言ったんだよ」なんて言われたこともあった。
先生たちは、顧問の偏見よりも「この発言はおかしい」と主張する私の方に違和感を感じているようだった。
そんなこともあったりしたが、私は運良く受験に合格し、第一志望であった女子大に入学することができた。
これは、顧問に何も言い返せるほど考えを持っていなかった私の復讐
これは私の復讐だ。
覚えていないけど、おそらく私はバスで顧問に何も言い返せなかった。
はらわたが煮え繰り返るほどの悔しさを感じつつも、あの言葉に言い返せるほどの考えを当時は持っていなかった。
先生に言われるまま「そういうものなのかなぁ」とその場では自分の悔しさを飲み込むしかなかった。
後になってあの発言のおかしさに気づいた時も、性別を理由に傷つけられた私の気持ちは他の先生方から理解されることはなかった。
だけど、あのときの悔しさを忘れなかったからこそ、今は女性リーダーの育成を掲げる大学に通うことができている。ジェンダーに関する授業を今までいくつも履修し、男女不平等問題だけでなくLGBTQやもっと多岐にわたるジェンダー観にまで知識を広げるほどには視野が広くなった。
あのとき言い返せなかった分、私は成長できたのだと思う(そうでありたい)。
バスの中で涙を堪えていた私へ、
ちゃんと復讐できたよ
大学4年生の私より。