何故、私は可愛い人になりたいと思うのか。

極度の面倒くさがり屋な私。その中でもメイクをすることは、特に面倒くさい。第一に時間がかかる。これはきっと個人差があると思うが、私はだいたい30分~40分くらいかかる。

朝早く用事がある時、そんなメイクに取る時間があるならベッドで二度寝を済ませ、だらだらとスマホを眺めながらLINEニュースを見て芸能人ゴシップを手に入れて、今日の話のネタにでもしたいものだ。

今のご時世マスクで顔の1/3は隠れるが、私は「メイク」をする

まつ毛で印象は大きく変わるため、私はいつもまつ毛にかける時間が一番長い。ビューラーでしっかりとまつ毛を上げ、直角に上げすぎるときつい印象を持たれるので少しカーブさせて。このまつ毛をキープさせるためにまつ毛下地も塗って。乾いたところで前菜は終了。メインディッシュにマスカラ。まぶたにつかないように慎重に……。あっ。綿棒でふき取る、の繰り返し。最後にダマになっているところをまつ毛コームで整える。あー長い!

そして、第二に手が汚れることもいけ好かない。最初に顔全体に塗る日焼け止め。手がべとべとになる。リキッドファンデーション。もう手の平の色が変色しシワがなくなってしまう。しかも、これがなかなか洗っても落ちない。

アイシャドウ。いやアイシャドウはブラシを使えばいいじゃないかと言われるかもしれない。その通りだ。しかし、指の方が発色が良くて、簡単に塗れるから私は指で塗る派なのだ。指を見てみたらラメでキラキラに輝いている。指で操る魔法使いになんてなれないのに。

第三にこのご時世、どこに行く時でも私たちはマスクを着用しなければならない。どれだけ時間をかけてメイクをしたって、見えているのは顔の1/3のみ。そして、マスクを外せばファンデーションとリップがマスクに付着。マスクを外した自分の顔を見ればファンデーションはよれて、鼻周りにつけたノーズシャドウとハイライトは消えていて、マスクが触れていない目元まで黒ずんでいるような錯覚になる。

好きな人に会える日、私のメイクに対する「考え方」が変わった

こんなメイクに対して文句ばかり言っている私だが、ある日、その考えは大きく変わることになる。好きな人に会える日。その日だけ私のメイクに対する考え方は変わった。

メイクの時間を1時間設けた。二度寝なんてしている暇はない。今は芸能ニュースなんてどうでもいい。

まつ毛にかけた時間、この日は長いとも思わなく、むしろもう少ししていたかった。横から見たまつ毛のカーブも何回も気にしながら、ダマになっていない場所さえもコームで整えていたかった。

あれだけ嫌だった日焼け止めが、日焼けしないようにと、いつもより気持ち白くなれるようにと、いつもの2倍塗った。いつもの2倍手がべとべとになったが何も気にならなかった。

アイシャドウが付着した指。その輝きがとても愛おしく、今日だけ魔法が使えるのかもしれないとさえ思った。

可愛い人になりたいのではく、好きな人に「可愛い」と思われたかった

眉毛は濃くなりすぎず薄くなりすぎず、自眉を活かして。普段しないアイライナーもこの日は引いた。少しでも目が大きく見えるように。あなたの取り巻く周りの景色が広く見えるように。

ノーズシャドウもハイライトもお構いなしに。マスクでメイクが崩れ防止のスプレーを今日のために手に入れたから。最後の仕上げに真っ赤なリップを添えて。

私は可愛い人になりたいのではなかった。私はただこの人に、「可愛い人」と思われたかったのだ。

だから私は、これからもメイクをし続けるだろう。