猛威を振るう、ウィルス。みなさんの生活はどのように変化しただろう。
出会いはどのように求めているだろうか。
わたしはというと……、軒並み合コンや飲み会は中止。
新しい仕事場での出会いという、ビッグイベントは絶たれた。新境地で就職となり、異性との絡みは一切なし。ついでに、彼氏もなし。
地元では、一年前彼氏と別れ、その寂しさやら何やらをを埋めるため、色んな男に手を出しまくっていたのに。
新境地での出会いを、楽しみにしてたのに。
マッチングアプリで出会った彼。心の距離は縮まっていった
どうしようかな。考えた結果、マッチングアプリを入れた。
そして、近所に住む同じくらいの歳で、顔がタイプそうという基準を自分の中で設定。ピザをデリバリーするような軽い感覚でケータイの画面に映る男をスクロールし、選択。実際に会うことになった。
お互いの服をラインで送り合い、仕事終わりに、駅で待ち合わせた。
日が暮れ、暗くなった駅に現れたのは、茶色のゆるふわパーマで、目が大きい、犬みたいな今どきの男の子。
マッチングアプリって、いい男には出会えないっていうけれど会えるじゃん!
わたしのテンションは緩やかに上昇した。
しかし、時刻は18時。飲み屋もご飯屋も、遅くまではやっていない。はてさて……どこに行こうか。
話し合い、少し小洒落たカフェへ。彼の希望でカウンター席へ。2人で横並びに座る。
わたしは、カウンター席を強く希望する彼を見て、恋愛指南書でも読んでるんだろうな。女慣れ案外してないな、なんてことを思う。
初対面で、お互いマッチングアプリ利用は初めてということで、少しギグシャクした雰囲気がありつつも、仕事や、趣味、好きなタイプなどの話を始める。年齢が近いからか見ているユーチューバーや、漫画などが被り、話は小気味良く、心地よく続いた。
わたしが冗談を言う。彼がノリでつっこむ。2人で転げ合うように笑う。
いい雰囲気?とまでは、行かないけど心の距離が縮まっていっているのを、彼が私に興味を持ちつつあるのを感じる。
「行こうか」と彼の手を握り、事前に調べてきたあの場所へ
お店の外に出る頃には、日はどっぷりと暮れていた。真っ暗。お店もやってないから、ほんとに街が暗い。
道路で風に当たりながら歩いていると、彼がビー玉みたいに丸くて大きな目で、わたしを見つめてくる。わたしはすこし恥ずかしそうに、顔を赤くし目を逸らす。
お酒も入っていないのに、頭がぼんやりとしてきた。したい。
彼の距離が近づく。わたしのパーソナルスペースに入る。距離感は今、5cmくらいしかない。近づき過ぎて、手と、足がぶつかる。
「あっ、ごめん」
彼が謝る。さっきまで、あんなに会話してたのに。急にお互い無言になる。
駅までもう少しだ。どうしよう。次は、わたしが彼の大きな目を見つめる。
彼の、ボコッと飛び出た喉仏が、動く。ゴクっと唾液を飲みんだ。
駆け引きの始まりだね。
誘いなよ。早く。
心の中でつぶやくが、彼は何も言わない。見つめ続けると、彼のビー玉みたいな大きな目は、少し慄いたように、わたしから目線を逸らす。
もう一歩で、駅というところで、わたしは立ち止まった。
「行こうか」
わたしは、彼の骨が出っ張った、少しカサカサの手を握る。
コロナ禍だから、居酒屋も、ご飯屋さんも、カラオケもやってない。だから、行くところは決まってる。少し遅い時間に男女が行くところといえば一つしかない。
事前に調べてきた、駅近にある、お城をモチーフにした、バカみたいに大きなシャンデリアと、柔らかくてふわふわなソファーとベッドのあるその場所へ行く。
そして、わたしと彼は……、交じり合った。
子犬みたいに見える彼の目が、急に狼みたいに、獰猛になる。自分の動きをシャットアウトされて、相手に貪られていくのを感じて。
さっきまでわたしが主導権を握っていたはずなのに。少し悔しいと思いつつもわたしは、自分を相手のなすがままにされ、全てを委ねさせられるような感覚に身を溺れさせる。
自分が自分のものじゃないみたい。冷静になりたいけど、なれない。熱に浮かされたような、バカみたいな動物的行為を、楽しみ始める。
なぜ、わたしはこいつとしてたんだろう
終わった後……、
「俺たち濃厚接触者だね。また、会おうね」
彼は笑いながらいい、疲れ果てて、子供のように寝入り始める。それを見てわたしは、なんだか、冷静な気持ちになる。
は?なんか、こいつうざい。
まず、濃厚接触者って表現ださいぞ?
もう、会わないよ。たしかに、気持ちよかったけど、わたしたち、それだけじゃん?
会って一回目だしさ。
漫画とかYouTubeの話で盛り上がったように思えたけど、実は有名どころの浅い話しか、お互い出来てなかったの気づいてる?
スマホの時計を見ると、3時。メイクも落としてないし、体は唾液やらなにやらで、ベトベトで気持ち悪い。
なぜ、わたしはこいつとしてたんだろう。家で、いつものシャンプーとリンスをして、スキンケアをしたい。早く家に帰りたい。
また、好きでもない人と、性欲だけでやってしまった。
ほんとは、前の彼氏が恋しいだけのくせに。好きな人とする、幸せを求めているだけのくせに。
突然、襲われる虚無感。自分への失望。冷静でクリアになった頭で繰り広げられる反省。
わたしは、コロナ禍だろうと、コロナ前だろうと変わらなかった。
わたしは、どんな状況でも寂しさを埋めるため、無理矢理にでも、相手を探して、してしまう、ビッチだった。
馬鹿だった。