大粒のラメシャドウ。強気に跳ね上げたアイライン。きりっとした眉にノーズシャドウで、アメリカモデル顔負けの堀の深い顔のできあがり。
艶を演出するハイライトはあくまで品よく。仕上げは真っ赤なルージュ。これがなきゃ締まらない。
照明付きのドレッサーに映る私は、女優顔負けの華やかさなの。
鏡よ鏡、私が一番綺麗でしょ?大丈夫安心して。あんたは昨日より綺麗で、明日はもっと綺麗になってるよ。

同級生に影響を受けてコスメを一式購入し、私のメイク人生は始まった

メイクを始めたのは高校に上がってからだ。あることがきっかけで女子高に入学した私は、初日に愕然とすることとなる。
リップも眉もアイメイクもすでにあか抜けた同級生に囲まれて、その日の私は、買ったままのスカートの丈を追って短くするくらいしかできなかった。帰りにコスメショップで、ティーン雑誌でモデルがおすすめしていたコスメを一式購入して、私のメイク人生は始まった。
私は一人っ子だったし、母は化粧っ気のない人だったから、メイクのやり方を教わる人はいなかった。雑誌とにらめっこして時には友達に聞いてみた。
でもアイプチはやりすぎて目が腫れるし、眉はギャグみたいな太眉だし。いまだに、正解のメイクなんて分からない。
そもそも私は、自分の顔が、自分が、好きじゃなかった。
私は中学校の時に内臓の病気にかかり、三年間薬を飲み続けた。ニキビと、不自然に顔が膨れるという副作用つきの薬で、お世辞にも可愛いと、普通の顔とも言えなかった。

女子校に入って気づいた、ブスと諦めていた自分のマインドのダサさ

ブスだった。と言うか、クラスの男子に「ブス」と笑いながら言われ、そう思い込んでいた。
一年中マスクが外せなくなった。いつも俯いて人の目が気になった。今日は昨日よりブスになってるんじゃないか、明日は今日よりブスになってるんじゃないか。そう思うと不安で不安で、鏡を確認することがやめられなくなっていた。
女子高に上がったのはそれが理由だ。女子に陰でブスと笑われるより、冗談でも、男子に面と向かってブスと言われる方が私には何百倍も辛かった。
ブスな私がメイクなんて。そう思っていたのかもしれない。
だけど女子高に入って状況が一変した。
え、みんなかわいくね?キラキラしてね?私、ブスっつーか……ダサくね?
あか抜けは一日にして成らず。同級生はみんな、元の顔がどうだろうが、みんな自分に似合うメイクを研究し、なりたい自分に近づくために努力していた。
中学までの私は、最初からブスと諦めて努力すらしていなかった。そのマインドがダサかった。

可愛いメイクを研究するうちに、鏡に映る表情が柔らかくなっていく

始めた頃は自分にどんなメイクが似合うか分からなかったけど、色々やるうちに慣れていく。メイクが顔になじんでいく。そうすると、新しいコスメを試したり、友達とメイクの話で盛り上がったり、周りに合わせてやってただけのメイクがどんどん楽しくなった。
もっと自分が可愛くなれるメイクを研究するうちに、鏡に映る私の表情が柔らかくなっていくのが分かった。
コロナでマスク着用が当たり前の世の中だけど、今の私はマスクを外したくてたまらない。
メイクがうまくいった日は特に見て欲しい。きっと私は満面の笑みだから。
私はもうメイクを、周りに合わせてやってるわけでも、ブスを補うためにやってるわけでもない。メイクが濃くてもキツイ印象を与えていても、似合ってなくても放っておいて。魔法なんかじゃない。
努力したの。今の自分がとっても大好きなの。明日はどのルージュをつけようか。
鏡よ鏡。私が一番綺麗でしょ。
昨日よりも今日、今日より明日、自分の好きな自分になれますように。