「爪、素敵ですね」
その日、わたしの爪は鮮やかなアイボリー。ビビットではないけれど、目につくお気に入りのカラーです。

週に2度ほどするセルフネイル。色やデザインを変えると気分も変わる

週に2度ほど、セルフネイルをしています。爪の色やデザインを変えるだけで、服装や化粧、果てには気分も変わります。

ネイルを始めた当初は、レッドやダークグリーンなどの鮮やかで濃い色や、ブルーやパステルパープルなどの人肌からかけ離れた色にためらいがありました。
大人の女性として、社会人として、この色はいかがなものか。誰かに何か言われやしないか、知らぬところで迷惑をかけるのではないか。

しかし、飲食業でも接客業でも医療者でもないわたしの爪色に関心を寄せる人など、数えるほどしかいませんでした。ころころ爪を塗りかえるので、「かわいいね」「すてきだね」と声をかけてくれた女友だちも、だんだんコメントをくれなくなりました。でも、それでいいのです。
誰かのために爪を塗っているわけではありません。美しい爪先が視界に入るだけで、嬉しくなったり勇気がでたり自信をもつために。
わたしはわたしのために、ネイルをするのでした。

「爪、素敵ですね」。仕事相手からかけられたその言葉に私は固まった

その日は、アイボリーの爪。
仕事で社外の方と打ち合わせをする必要がありました。まあ、レッドやダークグリーンやブルーやパステルパープルよりはマシだろうと、そのまま出かけました。そうしてつつがなく仕事を終えて、帰り際。

「爪、素敵ですね」
声をかけられて、固まりました。友だちや家族ではない、仕事相手からかけられるその言葉は、ポジティブな意味ではないでしょう。

「すみません」
ひと言返しました。返したけれど、わたしはまた、爪をアイボリーにします。わたしはわたしのために、ネイルをするのです。

今週は、ダークグリーンの爪。
ヒトとしてあまりにも不自然で存在感を放つ色。キーボードを打つ手が、ヒトとかけ離れた別の生き物を想像させました。自分ではない何かに変身したような気がして、力が湧いてくるようでした。
理不尽な仕事も、うまくいかないプライベートも、その気になれば、この爪でひと思いに。
そんなわけないけれど、そんな気さえしました。

おめかしは女の子にとっての武装。力を発揮させてくれる強い味方

「大変だね、女の子って」
おめかしして、お手入れして、自己投資する女子を指して言うけれど、本当にそうでしょうか。女子に生まれたからって、辞めたきゃ辞めるし、やりたくないことはやらない。やりたいから、やっているのです。

なぜっていう理由は人それぞれ。でも、根本は「強くなるため」の一言に尽きるのではないかと思います。
人生において持てる以上の力を発揮しなければならない時、えいやっと踏ん張れる、自信を与えてくれる、力を発揮させてくれる強い味方。いわば、女の子にとっての武装。

そのために今日もせっせとおめかしして、お手入れして、自己投資します。
そう考えると「大変な女の子」は、想像以上に「強いヒト」かもしれません。見くびらないで。