「別れよう!友達にもどろう!」
高校時代一年半付き合っていた彼にLINEで送った言葉。
彼から「わかった」と返信が来て、私たちの関係は友達に戻った。

私とは考え方が真逆の彼。話を聞くのが好きだった

話は少し変わるが、私には小さな頃からの夢があった。
料理人になりたい。誰からも「美味しい!最高だ!」と褒められ認められる料理人に。
料理人は職人だ。全ての時間を料理人に尽くさなきゃいけないと学生ながら理解していて、就職したら恋愛の時間なんて取れないだろうと思っていた。だからあの時言わなくても、遅かれ早かれ私から結局別れを告げていたのだろう。

彼は私よりずっと頭がいい。安全な道を辿るために調べ行動し、成功率を上げてから動くタイプで、仕事は生きるために必要だからする、という考えの人だった。
一方私は成功率は30%あれば動くし、やってからダメだったら考える。好きな仕事につき、毎日大変でも好きだから精一杯頑張る!!っていう真逆のタイプだ

もちろん彼の考えを否定することはないし、彼の自分と違う考え方が新しい発見を見つけてくれるから彼の話を聞くのがとても好きだった。何年経ってもしっかり覚えているほどに。

とにかく頑張らなくてはいけない。期待に応えて成功しないと

彼とはよく未来の話をした。
もちろん私は「仕事がんばりたい!」って話すが、彼は一度だけ、本当に一度だけ、私に「そんなに頑張らなくていいじゃん」と否定した。いや、多分あの時彼は否定したわけではなかったが私はそう捉えてしまったのだ
その日のことが胸に刺さりっぱなしで、今まで小さなモヤモヤは自分で消化できたのに消すことが出来なくなり、冒頭のLINEを送ってしまったのだ。

専門学校に入ってから、負けず嫌いな私は彼の言葉に反抗するかのようにがむしゃらに頑張った。当然恋愛なんてする余裕がない。努力の結果、先生から優秀と言ってもらえる生徒になり卒業した。
就職した私をいろんな人が応援してくれた。
「頑張って!!!」「応援してる!」「君は優秀だから大丈夫」「あなたが将来成功することを確信している」などなど、みんなの言葉が嬉しかった。
そこに、頑張らなくていいと言う人は誰一人いなかった。

就職して半年。
誰よりも早く行き、帰りはほぼ終電。雑用も楽しんでるように笑顔で引き受け、やりたくないことも率先してやって、休日はずっと家にこもって飾り切りや魚の三枚おろしの練習。夢の中でも仕事の夢ばかり見ていた。

とにかく頑張らなくてはいけない。頑張らないと自分は必要ない。優秀だと言ってくれたなら期待に応えて成功させなくては……と自分を追い詰めていた。

コロナ禍の休みを利用して、彼に再会。また好きになった

いつしか三日に一度のペースで同じ夢を見るようになっていた。
夢には高校の友達がたくさん出てきて、一人一人「頑張れ!!」って応援してくれる。それに対して、みんなに「頑張る」としか返事できない私は笑顔がひきつっている。
そして最後に彼が、あの時と同じ顔で「そんなに頑張らなくていいじゃん」って言う。夢の中の私は、彼の言葉を聞いて返事をする前に目が覚めてしまう。

ある日起きた私に姉が言った
「昨日あんた泣きながら寝てたけど、大丈夫なの?」
驚いた。次同じ夢見た時に夢の中の自分をよく観察してみた。
彼の言葉に返事をしないのは不服だからじゃなくて、泣き過ぎて言葉が出てこない自分がいた。

誰もいなかったのだ。休んでいいよ、そんなに急がないでいいんだよと言ってくれる人が、彼以外いなかった。何年越しに聞く彼の言葉は、今度は私の心を守ってくれた。
その後コロナの影響でいろいろあり休みができ、彼に会った(めちゃめちゃ感染対策してます)。
昔とあまり変わらない彼にホッとして、会ってなかった間の話をして、たわいのない話をして……また彼を好きになった。

今週のお題「タイムマシンにのって」を見たときにこの出来事がポンと出てきた。
タイムマシンに乗ったら、きっと高校の頃に戻るだろう。

別れたことに実は後悔していない。休日を潰してできるようになったことで今、仕事がもらえているから。私の中にいる過去の彼を好きになったのではなく、今の彼をまた好きになったから。
だからもしもタイムマシンに乗れたら、私は彼に、
「3年後私は君にプロポーズするから!その返事を暇な時でも考えといて!」
っていうかな。
私から付き合ってもないのにプロポーズされるなんて、きっと彼はなんで!?って顔して驚くだろう。

その後はよく二人で行った公園で、未来から来た私と未来の未来の話をしよう。