コロナになって世界は変わった。
でもみんな不満を抱えながら、不自由な生活にも慣れていく。
そんな生活が続いて1年経過したとき。私の生活はさらに変わった。
まさか結婚前提で付き合っていた彼氏に振られるなんて思ってもみなかった。
思い描いた20代を実現するため、マッチングアプリに登録した
体重がわかりやすく減るくらいにはショックだったけど、時間が経つにつれ、「いや、落ち込んでいる場合じゃない」と思うようになった。
何となく20代後半で自分が結婚しているイメージがあったし、周りの友達を見ても、みんなそれくらいで結婚していくから、漠然とそういうものだと思っていた。
いや、でも待って?いつの間にか20代もあとわずか。
思い描いていたイメージに到達するには、ここから全力疾走しないといけなかった。
正直、今の生活に満足している。
仕事が楽しいし、友達にも恵まれている。
だけど、自分が選んだ人と家族になるということもまた幸福に違いない。
もうそろそろ違う世界を見たいな、と思っていた矢先に告げられた別れ。
例えるなら、ここにきて人生すごろくの振り出しに戻った気分だった。
何が一番しんどいかって、また1から恋愛に発展する相手を探さないといけないこと。
大学卒業をして5年。ずっと同じ環境で働いている私には、到底そんな出会いは期待できなかった。
コロナで人に会えないことを言い訳にはできるけど、その間にも私は1歳年をとってしまう。
20代の結婚に憧れがある私は、もうこれはなんでも良いから行動しなきゃ、と決心しマッチングアプリに登録した。
初対面の彼と喫茶店へ。ふと見えるマスク無しの横顔をもっと見れたら
登録して次の日に来たメッセージを送ってくれた人は、私と出身地が同じ28歳の男性。
写真からは全然顔がわからないけど、まじめで誠実そうな人。出身地が近いこともあって、共通の話題で盛り上がった。
それまではマッチングアプリでの出会いに懐疑的だったけど、この人なら実際に会ってみたいなという思いが強くなった。
こういうとき、普通だったら飲みに行きましょうとなるのかな。
お酒の提供は禁止されているし、大型商業施設は閉まっているし、行き場のない私たちは、色々と模索した結果、近くの公園を散歩しましょうということになった。
当日、待ち合わせ場所に現れたのは、背の高い爽やかな男性だった。
マスク越しに笑う顔が素敵だなと思った。
コロナ禍で初対面の人と会うときは、マスクを外す瞬間が一番緊張する。
マスク生活に慣れすぎて、お互いの顔を見るのが恥ずかしい。
私が紅茶を飲むときに、彼がこっちを見ているのがわかる。
化粧が落ちているからそんなに見ないでほしい、なんて本心では思いながら、私も同じように、コーヒーを飲むときだけ見える彼の横顔をもっと見ていたいと眺めた。
いろんな表情をマスク無しで直接見られるというのは、きっと、コロナ禍において大切な人だけの特権なのだろう。
今ではマスクに隠れた笑顔を知っている私は、大切な人になれたかな
公園を散歩しながら、私たちは色んなことを話した。
仕事は何をしているか、休みの日は何をしているか、趣味、好きな食べもの、行きたい場所、これからやりたいこと。
おしゃれなレストランで、美味しい料理とお酒を頂きながら話すのもいいけど、この人となら、何もなくても、ただお互いのことを話すだけで楽しい。
そんなデート、たぶんコロナ禍じゃなかったら経験できなかっただろうな。
波長が合うとはこういうことかもしれない、と直感でそう思った。
それから3回デートを重ね、私たちは付き合うことになった。
そして、今日で初めてのデートからちょうど半年になる。
いつ結婚するかはまだ分からないけど、間違いなく彼を選んでよかったと思う。
コロナが終息したら、2人でやりたいことがいっぱいある。
今年中に一緒に地元に帰れたら良いね、と話す彼は今日もマスクをしているけれど、そのマスクに隠れている笑顔を知っている私は、彼の大切な人になれたかな。