元彼は皆イケメンだ。
私だってかわいいと言ってもらえることはあるから、そう悪くはないと思っているけれど、まぁ美人ではない自覚はあった。
一番かっこいい元彼といた時は「不釣り合い」と言われたこともある。
イケメンと付き合えたのは、私が変わり者で情に厚かったからだろう。
しかし幸せな思い出は少なく、私は付き合っている時の方が苦しい思いをすることばかりだった。
その上、学生時代に二股をかけられたことで、恋愛に対して冷めた見方をするようになった。私は本命ではなかったらしい。
その後に付き合ったA君のおかげで立ち直れたものの、私はそれまで、A君と今の彼氏以外に大事にされた覚えがない。
私は彼らイケメンの彼女としては、少し見た目に劣るようだ
なんでこんな扱いなのかと悩んだ。
最初だけは彼女扱いされても、すぐお荷物になる。女らしくならぬよう、嫌われぬよう努力していた。
しかしある程度行くと諦めがついた。きっと彼らにとって私はただの憧れの存在で、かわいい彼女ではないんだろう。そう諦めたかったのに、相手は好きだとか別れたくないとか言うから私は困惑した。
この扱いに満足しない自分が悪いような気がした。こういう男性にしか愛されないんじゃないかという不安もあったから、なかなか自分から別れを切り出せなかった。
こんな扱いをされる理由を考えて、ふと「不釣り合い」という言葉を思い出した。
どうやら私は、彼らの彼女として考えると、少し見た目に劣るようだ。やはり女性の方が少しはかわいくないとうまく行かない。
だから彼らは私のことを彼女扱いできないのだ。
そう思ったらこれまでの全ての疑問が晴れた。これで全て辻褄もあってしまった。
すっきりしたけど、落ち込みもした。
ただ、救いもある。
男性は自分より少し見た目が良い女性は、皆かわいいと思えることが多いと知ったからだ。
今の彼氏は私の写真を人に見せると、見た目を褒めてもらえるらしい。
私は彼のこともかっこいいと思っているけれど、世間一般の目で見たら、私の方が彼より見た目は優れているようだ。
私よりずっときれいな人が彼に「かわいい子捕まえたね~」なんて言ってくれる。それから「〇〇君は性格がいいから~」と彼への褒め言葉が続いた。
私に対する"かわいい"はその人から見たかわいいというより、彼の彼女と考えたらかわいいという意味なんだろう。そしてその分、彼は内面が優れていると評価されたのだ。それが一番幸せだと思った。
私は今の彼氏が一番好きだ。
一度人を見る目を改め、自分の市場価値を考え直したことで、自分を大事にしてくれる人を見つけられた。自分の市場価値を考えると言っても、自分を卑下することはない。「自分は美人ではないから」の一言で片がついた。
人を見る目を改めたら、そんな目につくようなタイプじゃない人でも魅力的に思えた。
そして今までの、見た目だけの張りぼて野郎はなんだったのかと、憑き物が落ちたかのようにすっきり彼らを忘れられた。
A君は良い思い出となり、それ以外は皆どうでもよくなった。
見た目はやっぱり、男女で同じくらいか、もしくは男の子より女の子の方が少し良いくらいが上手くいくようだ。
そうじゃなくても上手くいくことはあるのかもしれないけれど、私は全部ダメだった。
イケメンの元彼たちは私のことを好きではあっても、恋人として愛していなかったようだ。
そのことに気がつかなかった彼らも哀れではあるが、若気の至りというやつなんだろうか。
一番傷ついたのは私なんだけど、まぁ自業自得というべきか。
イケメンが私を好きになってくれたことが、自信になっていた
先に述べた理由は表向きの、自分に言い聞かせていただけの理由だ。本当は、私は自分の価値を相手に依存してもいた。
私自身はダメだけど、こんな人が私を好きになってくれるのだということが自信になっていたのだ。今思うと呆れて言葉も出ないが、若かったのだ。過去のことは仕方ない。罰はしっかり受けたからもういいだろう。
しばらく、こんな人たちと付き合ってしまったことの後遺症に苦しんだ。いつも相手の顔色を伺ってしまったり、すぐに飽きられるんじゃないかと心配したり、軽い浮気や優しくされないことが当たり前だと思い込んでしまうことから、やっと解放されつつある。
その上彼らは今の彼氏と違って、私が困った時には助けもせずに逃げる。病気をしたって看病なんかしない。私に会わずに遊んでいるだけだ。
顔を見なくなった私のことを心配した友人たちが「くじらはどうしてる?」と彼らに尋ねると、てきとうな返事が返ってきたらしい。会っていないどころか、心配すらしていないことが分かって呆れたそうだ。
呆れたのはきっと彼らに対してだけではない。そんな相手を選んで変えようともしない私にも呆れていたはずだ。
自分にとって幸せな道を選ぶに必要なのは、自尊心だと気がついた
実際私を大事にしてくれる人は他にいないなんてことはなかった。そもそも彼らは私を大事になんてしてはいなかった。
パッとしなくたって、本当に自分を大切にしてくれる人を大事にすべきだった。
好きだと言われるからいいわけでも、やることやってりゃいいわけでもない。都合がいいだけの関係なこともある。
それを見抜けず、上っ面の利益を考えていた私がバカだったのだ。
昔の私と同じ考えの人もいるかもしれない。今なら引き返せる。早いうちに切り替えた方がいいと私は思う。
背伸びせず、自分の一番幸せな道を選ぶに必要なのは、自尊心だと気がついた。
そして地味な生活に喜びを見出すこと。あんまり欲をかいちゃ不幸になるばっかりだ。
そうすればきっと自然に自分にとって幸せな選択ができるはずだ。