ニュースで見ていたあの事例が、自分の身に降りかかるなんて…

3月31日。SNSは希望と絶望の言葉で溢れていた。
「明日から学生料金じゃないなんて泣」「明日からは社会人。頑張るぞ」

緩やかにスマホの電源を切った。
1ヶ月前まではこの大勢の内の“一人”だった。小さい頃から早く自立したいと思っていたし、早く一人前の「大人」になりたかった。人よりも何倍も社会人になる心構えはしていたつもりだった。

しかし、あっけなく夢は消えた。「内定取り消し」という社会の大きな波に呑まれたのだ。
ニュースで見てその事例が多数あることは知っていたが、まさか自分がなるなんて思っても見なかった。

私は焦った。新卒サイトに登録し、「既卒可」と書いてある求人に全てエントリーした。
就職エージェントに登録した瞬間、登録されてない電話番号から電話がひっきりなしに掛かってきた。事情を話すと、「可哀想だったね」と同情の言葉を皆掛けた。1日2、3個の説明会を受け、面接を受け、落とされる日々を繰り返した。

何故夢は叶わないのだろう。一人部屋の中で毎朝泣いた。友人の新社会人生活を横目で眺めていると、何もしていない自分がとても惨めに見えた。
そして、新社会人の友人と連絡を絶った。私は「孤独」の籠の中に自分を追い込んだ。

現役での就活は全く上手くいかなかった。でも、今回は違った

しかし、日が経つに連れ私の状況を知り、協力してくれる人が増えた。留学アドバイザー、SNSで知り合った社会人、ゼミの教授……。今までは関わりのなかった人もいた。
ある人は、私を「大学時代の自分に似ている」と一生懸命進路を共に考えてくれた。
ある人は、「やりたいことをやりなさい」と背中を押してくれた。
ある人は、「もっと人に頼りなさい」と怒ってくれた。

自分のやりたいことは何か。立ち返って考え、就活の軸を絞った。すると、たちまち面接が通り始めた。内定が出たのは、無職期間を2ヶ月過ぎた頃だった。考えられないほど、複数の内定を貰うことができた。

昨年度、現役での就活は全くと言って良いほど上手くいかなかった。だから、選択肢すらなかったし、「自分」という人間のレベルを否定されているような気がした。
しかし、今年度の就活は自分を変えなくても上手く行った。

人に頼らず、一人で生きていけるのが「強い」と思っていたけれど

私は人に頼ることが大の苦手だった。いつも一人で抱え込み、一人で部屋に閉じこもる。しかし、そんなことを続けていても、何も解決策は見えてこなかった。
この人生の岐路とも呼べる苦境を通り過ぎて見ると、自分は人にとても恵まれていたことに気づかされた。
いつの間にか、一人で生きていける「強い」人間だと強がっていた。しかし、違った。愚痴を言える友人や絶対に否定する言葉を言わなかった大人達、様々な人に支えられて生きていたのだ。

ずっと周りの人間は「敵」だと思っていた。去年は大企業の内定を取る仲間達を見ながら、僻んでいた。でも、違った。
どんな人間も自分の夢を叶えるため、前を向いて突き進んでいる「同志」なんだ。だから、どれだけ頼ってもいい、叫んでもいい。皆自分の夢を応援してくれる「味方」なんだ。

私は大企業に行く訳ではない。でも、これ以上にない「納得内定」だった。それに気づけた少し余分な就活も悪くないもんだと思った。

明日から勤務初日。LINEの通知には「おめでとう」「頑張って」と言葉が並ぶ。
いつか、皆がびっくりするくらいの大きな人間になって、恩返しがしたいと思う。