仕事をやめました。
嫌いだったからでも嫌いな人がいたからでもない。むしろ大好きなあなたを大好きでい続けたくてやめました。
あれから2年が経って正解だったとようやく思える今日この頃。

安定した職場で、なんとなくしあわせだったけれど…

元々私は小説家になる夢を持って東京にきて、習い事をしていた教室の近くに引っ越して今の部屋に住むことになり、結局なんだかんだあってやりたいことをできず東京に来た意味、一人暮らしをしてる意味、もはや生きてる意味も見いだせずにいました。
そんな時、職場で学生時代以来の恋をして、少し目的に触れた気がしていました。

最初は恋に恋するような淡い恋心でしたが、加速する「好き」と職場での昇進、順調なようで全てが止まっているような自分だけが止まっているような不思議な感覚で、仕事が忙しくなればなるほどその感覚は大きくなりました。

「なんとなく」頑張れてるし、「なんとなく」安定感があって、「なんとなく」しあわせではありました。一人暮らしには充分すぎるお金も恋愛も役職も、「人間」として、「女性」としてはしあわせであることは間違いありませんでした。

迷っている背中を押してくれたのは、上司の言葉だった

しかし立ち止まってみると、「自分」のしあわせがそこにないことに気づきました。
私の人生に責任をもてるのは私しかいない。私がしあわせじゃないと私の人生を私が生きる意味も価値もない……そんなふうに物凄く心が震える感覚がして、年に一度の社員面談の日、私はチーフに話しました。
「最近どう?」
いつも通りの口調で自然に話を広げてくださるチーフの声に、思わず涙が出そうになりました。
社会人になりたての頃からお世話になっていて、いつも感情的で何でもかんでも口に出してしまう幼い私を父親のように叱咤激励し本当に愛してくださった、今の「私」を形作って下さった方でした。

なかなか辞職の意を示すこともできず言葉につまっていると、何かを察したのか、チーフは優しく話しかけて下さいました。
「悩んだらいいよ、その悩みが好きになるくらいに悩んだらいい。若いんだからその先にどんな道だって作れる。道ができてるなら行けばいい」
甘えられる言葉や引き止める言葉を少し期待していた自分と、背中を押して欲しい自分がいて、決めたはずなのに迷ってる自分がいましたが、その言葉で決心が出来ました。
「頑張れよ、俺はいつもここにいるから……って言いたいとこだけど、社員は3年で転勤になったりするからな」と微笑み、「頑張れよ」と抱きしめてくれました。

あの日私を応援して下さった全ての人に恩返しを

実父を知らない私にとって、もう一人の父と言っても過言ではないくらいに投入して頂いた実感があったので、近くに住んでるとはいえもう会えないかもしれないと思うと、胸がきゅうっと熱くなりました。
「頑張ります」
震えながらそういうのがやっとで、頭に浮かぶ言葉はたくさんありましたが上手く伝えられそうにないので、その言葉に全てを込めました。

最終出社日、挨拶回りを一人ひとりにしていくたびに、こんなに優しくて素敵な人達に囲まれて仕事していたんだ、別れる時に知るなんて私はバカだな、と思うと同時に、大好きな人達に応援してもらえる喜びと自分と自分の未来に対する期待感が高まりました。
「ありがとうございました」
会社の門をくぐり、心の中で敬礼をし会社を背にし、新しいはじめの一歩を踏み出した私は今、小説を書いたり音楽をしたり少しずつではありますが、自分のやりたい事をする人生へと少しずつシフトしています。

これからもっと夢を仕事にするために前へ前へと進んで、いつかあの日私を応援して下さった全ての人、私を今まで支えてくれた全ての人に恩返しできるくらい大きな人間になって会いに行きます。
前へ進もう。まずははじめのいっぽから。