私の家庭は、男尊女卑の家庭だ。
男尊女卑なんて作り話とか言われるかもしれない。それでも今どき、珍しいかもしれないが「家長の言うことは絶対」そういうルールがある。今日は、その男尊女卑の家庭のエピソードについて語りたい。

男の子を待望する家に生まれ、罵詈雑言をあびせられながら育った姉

まず、予備知識として、私の家は、田舎にある。それも、最近村から町になった。ド田舎だ。だから、町民も少なく、老人たちがほとんどだ。そして、考え方が古臭くて、凝り固まっている。
それと、家は父、母、姪、二つ上の兄、私が住んでいる。今回語るのは、姪の母親。姉についてだ。
姉は、私より十一歳年上で、物静かでゆったりした人だった。姉が産まれた時、皆が男の子を望んでいたから、産まれてすぐ失望されてしまった。母には、罵詈雑言をあびせられろくに育ててもらえず、ずっと家事をさせられていたみたいだ。それから、九年後兄が産まれた。皆は「やっと長男が産まれた」、母は「ようやく産むことができた」。
ますます誰も、姉のことなんて見なくなった。それどころか、
「九歳年下の弟に仕えろ」
といわれて、弟であっても兄には逆らえなかった。
それから、二年後。私が産まれた。皆、姉のときみたいにほったらかしにしていたが、姉自身は、違った。自分のときに、辛い思いをしたから、せめて私だけはと、忙しい合間を縫って育ててくれた。

「子は、女だから」。臨月の姉にタバコを買いに行かせた父の言い訳

本当に姉には感謝しきれない思いがある。姉は二十三歳の時、仲人さんの紹介で、お見合いで結婚することを決めた。姉自身の意思ではなかったものの、相手の方は心の優しい人だった。姉は、言っていた
「今までの分。しっかり愛されて、愛してあげるの。聖花も、そんな人に出会えるといいね」
姉は、その後女の子を授かった。しかし、男尊女卑の考えは姉を極限まで追い込んだ。父が、姉に、
「タバコを買ってこい」
と言ったのだ。
その時姉は、臨月に入っていて里帰り出産で帰ってきていた。前文でも述べたが、ここは、ド田舎だ。コンビニもない。買いに行くには、遠くのスーパーを利用するしかない。それなのに、父は買いに行かせたのだ。
帰ってきていたとき、姉はかなりぐったりしていた。私は、もちろん激怒した。そんな行為は、姉だけでなく、お腹の子も虐めるようなものだ。けれど、父はとんでもないことを言い出したのだ。
「お腹の子は、女だからいいだろう」
私は、愕然とした。男尊女卑の考えで命の重さまで決められるのか。

出て行った姉よ、これを読んでいるのなら姪を抱きしめてくれないか

その後姉は、破水してしまった。無事姪は、産まれたが、この時私は、姪のことを守ることを決めた。姪が産まれてまもなく、事故で、姉の夫がなくなってしまった。姉は、もう限界で、姪を置いて出ていった。
姪は、今私が育てている。かつて、姉に育ててくれたときみたいに。
姉よ、もしこの文を読んでいるのなら姪を抱きしめてくれないか。私は、貴方にいいたいことは山ほどある。でも、姪はいつも私を母だと思っていて、「お母さん」と呼ぶのだ。
その言葉を聞くたびに、
「ここにあなたがいたならば」
そう思うのだ。お願い。抱きしめてあげて。