少しずつ肌寒くなる秋の半ばに彼に出会った。私は中学2年生、彼は中学1年生。
男性というよりはまだ男の子といった感じの顔立ちと身長。私もまだ子どもだった。

狭くてどこか暗い放送室。そこで約2年間、放送委員として共に活動した。その間に一気に放送室は賑やかで過ごしやすい所に、彼に理由なく会える場所になっていた。
悪戯が好きで、たまに意地悪されて私自身泣いたこともある。怒ったこともある。
けれど、憎めない存在。お茶目な部分も少し。それが彼の特徴であった。そんな彼が大好きだった。

高校生になり彼とお付き合いスタート。この時も私はまだ子どもだった

卒業の前日、委員会のデータが入ったUSBを貸してくれないかと言われて渡した。後日、そのUSBをみると、入れた覚えのないデータがあった。
「2年間ありがとう。99.9%好きではなかったけど、0.001%は好きでした。卒業おめでとう」
卒業式後に2人で写真を撮った。そのあとにこの文章を見たのだ。
鈍感な私は、のちにこれがラブレターであることに気が付く。

私が高校2年生になって後輩であった彼と念願のお付き合いができた。この時も私はまだ子どもだった。
あれも確かに恋だった。でも相手の負担になる恋だった。
同じ県内。しかし寮生活を送り、部活を頑張る彼とのすれ違いは日々増え、1年も経たずにカップルとしてのお付き合いは解消されてしまった。
悲しくてしばらく何もできなかったことを覚えている。すれ違いもあるが、原因の大きな1つは私だ。
「ねえ。いま何をしているの」
「どうして私に構ってくれないの」
このような事で彼を多く困らせていた。寂しい気持ち、むなしい気持ちがずっとあったからだ。
会いに行っても、すぐに寮に帰ってしまう。カラオケに行っても寝てしまう。当日になって会えなくなってしまう。私は悲しくて仕方なかった。
「どうして……」

ボロボロで自暴自棄になっていた私と再会した彼の姿はもう大人だった

「遠くの学校へ編入することになりました」とぽつりとグループにメッセージが届いていた。私は冗談半分で「カニ送ってね!」と返した。
私なりの元気の伝え方。素直になれない私なりの返事。
その当時お付き合いしていた人はお金に無頓着で、そのことについて指摘をすれば罵られ殴られ、ボロボロになって過ごしていた。そんな人とのデートで無意識に彼がいないか探していた。もう彼は地元にいないのに。
もう限界だ……という時に彼は再び現れた。
久しぶりに会った時、涙を流すのを堪えていた。彼の姿はもう大人だった。
ボロボロになっていた私は自暴自棄になっていた。そんな姿を見て彼はどう思ったのだろう。
でもたくさん心配してくれた。そしてお互い少しずつ距離を縮めていった。
私は心を決めた。これからは私らしくいられる人の隣で生涯を過ごそうと。
1月5日。告白を受けて再びお付き合いを始めた。再び、2人で歩むことを決めた。

「Because I love you.」何度でも恋する理由はただそれだけ

南と北。ついさっきまで電話をしていた。声を聞くだけで安らげる。
たまにビデオ通話で、一生懸命勉強する姿を見ている。時折、昔の可愛らしい顔になるが、基本は凛々しい男性の顔立ちだ。中身も大人になっているところもあるが、悪戯好きなところはあまり変わっていない。彼から見ても私はあまり変わっていないだろう。

人生で最後の恋にしたい。
これは私の気持ちだ。これから先、何があろうと私は彼に何度でも恋をしよう。
愛を伝えていこう。お互いの胸の鼓動が続く限り。
何故彼なのかと聞かれたら理由は簡単だ。
高校時代に出会った神父様の言葉を借りるなら
「Because I love you.」
私が愛した彼だから。
ただそれだけ。それが理由なのだ。永遠に終わらない恋の理由は「彼だから」。
飾った言葉はいらない。本当にそれだけなのだ。