「今度、トリートメントしてきなよ。結婚記念日にプレゼントするよ。」

昨日、こんな提案があった。私の心を読まれたのかと思った。私はパートナーを見る目があったなと心の中で感心してしまった。

独身時代、友人と飲みに行ったり、デートをしたり、おめかしをする機会が多かった頃、私はヘアアレンジに気合を入れていた。ヘアゴムとヘアピンと少しの時間で、顔周りのイメージを変えれることがとても面白くて、たくさん研究してチャレンジしていた。上手くできた時は、早く誰かに見てもらいたかったし、上手くできない時は遅刻ギリギリの時間まで何度もやり直した。

あんなにヘアアレンジが好きだった私が今では、いわゆる”おばさんヘア”

それから数年、今ではヘアアレンジどころか黒いヘアゴムで一つ結びのみ。一つ結びといってもオシャレなフワッとしたのではなくて、“キュッ”っと結んだやつだ。息子が産まれて、おめかしする機会も減ってヘアアレンジという言葉すら忘れかけていた。息子が産まれる前までは、「なんで子供が産まれるとみんなそろって一つ結びなんだろう。5分くらいでできるからアレンジすればいのに。」と思っていたことを最近思い出した。(5分の貴重さを知らずに...。)あんなにヘアアレンジが好きだった私が無意識のうちに不思議に思っていた髪型を毎朝作っていたのだ。

これで、パサパサ髪の一つ結び、いわゆる”おばさんヘア”の完成だ。

スタイルやお顔も綺麗だったが、なによりも髪に目がいってしまった

そんなある日、友人の結婚式があった。久しぶりにおめかしの機会が私にもやってきた。熱に負けないようにヘアオイルでしっかり髪をコーティング、アイロンでボリュームをだしたら、ヘアアレンジスタート。大きく二つに分けて、頭頂から頭を囲うように下まで細かく編み込みを。そして、頭の後ろでヘアピンで固定してマットゴールドアクセサリーを。編み込みを少しだけ引き出してフワッとさせるのも忘れずに。もう一度ヘアアイロンで前髪や顔まわりの毛をくるくるっと。ふぅ、完成。わくわくした。久しぶりにヘアアレンジをしたが、手は覚えているもんだなと思った。鏡を見ると“おばさんヘア”の私はいなかった。不思議と背筋がのびて気持ちまで若返った気がした。久しぶりの友人たちとの再会は、学生の頃の気分を思い出しながら、とても楽しい時間を過ごすことができた。

ヘアアレンジの楽しみを思い出したところで、問題はこのパサパサ髪だ。ある時、家族で信号待ちをしていると、“とぅるん”とした艶のある髪の女性が目の前を歩いていった。とても素敵だった。スタイルやお顔も綺麗だったが、なによりも髪に目がいってしまった。「あぁ、トリートメント月一回通ってる髪だな...。」思わず呟いた。“髪って大切だな”確信した瞬間だった。30歳が見えてきた頃やっと私は、気づくことができた。正確に言うと気づいていたけど、見ないフリしていたのかもしれない。

美容院の予約をするだけでこんなに気分が上がるなんて

私の髪はパッサパサだ。肌は昔からトラブルが多かったので、どんなに時間が無くても肌のスキンケアだけは欠かさなかった。それに対して、髪は今まであまり関心を持っていなかった。高校を卒業してすぐに髪を染め、強めのパーマをあてた。当時の私はファンキーな髪型に憧れていたのだ。美容師さんに「髪へのダメージが大きいので別日にした方が...。」と忠告して頂いても、若くて無敵な私は「大丈夫です。やっちゃって下さい。」と...。悔やむ。それでも好きな髪型をしていた頃の私の気分はよかった。そこから、年月を過ごした結果がこれだ。枝毛だらけのパッサパサ。元々の癖毛と水分不足で髪が各々自由な方向へ動いている。

そんなタイミングで冒頭の提案だ。「え!ありがとう!」すぐに美容院の予約を入れた。早く美容院に行きたくてウズウズする。トリートメントしてもらうなんて結婚式ぶりだ。美容院の予約をするだけでこんなに気分が上がるなんて。私もあの日見た“とぅるん”とした艶のある髪になれるかななんて想像してにやけてしまう。学生の頃のファンキーな髪型はもう気分じゃない。30代を目の前にした私が気分が上がる髪を探してみようと思った。“髪って大切だな”