一生看護師として現場で働くつもりだったし、そうしたかったけど…

私は看護師だ。今では過去形だが。
長い間、急性期病院や施設で走り回っていた。そしてコロナ期を迎えて世の中の様々な事が変化した。現場の雰囲気も、仕事の内容も少し変わり、私の心も変化した。

その変化に、私は順応することが出来なかった。失敗を1つしても、すぐ立ち直れず、もう駄目だと、どんどん卑下してしまい自信をなくしてしまうようになっていた。現場のストレスで、私はパンクしてしまったのだ。

今までも仕事を辞めたいと思ったことは何度かあるが、耐えていた。何せ必死に勉強し、実習や課題を乗り越え、死にものぐるいで掴んだ看護師ライセンスを無駄にはしたくなかったし、何より学費で苦労をかけた両親のことを思うと、辛くなっても辞められなかった。一生、看護師として現場で働くつもりだったし、そうしたかった。

自分の管理ができないのに人の面倒なんて看れないと思うように

しかし、そうは言っても仕事のことを考えると嫌で嫌で仕方なく、頭がいっぱいになり、自暴自棄になり死にたくなる自分がいた。
そして、ついに自殺未遂をしてしまった。しかも一度ではない
医療従事者が自殺など粗末な話だが、ストレスが大きすぎて、私の思考はおかしくなっていたのだ。

何度も試したが、臆病な私が勝り、死ねなかった。死ななかった。病院に搬送されたり等、大事になることはなかったが、未遂後は毎回なんとも言えない気持ちが残った。馬鹿みたいだと少し笑う自分、殺して欲しいと祈る自分。

家族にも随分と心配をかけてしまった。自分の管理が出来ていないのに、人の面倒なんて看られない。上司にも相談したが、休職や精神科を勧められた。
けれど、原因を除去しないと意味はないと分かっていた。当時の上司は優しい人だったため、申し訳ない気持ちは強かったが、もう無理だった。私は看護師を辞めた。
そして、今は飲食店で働いている。

看護師に戻りたいと心から思えるまで、消えることのないライセンス

看護師としての歩みを止めたのだ。葛藤はあるが、今の仕事は楽しい。甘い優しい香りが、心を包んでくれるのだ。
看護師の仕事は正に3Kだった。キツい、臭い、汚い。綺麗なものではない。

周りからは高給取りだ、給料が良いと羨ましがられても、仕事の内容は排泄物の処理や、創部の処置、死後のエンゼルケア、周囲にはいつも独特な臭いがしていた。オンコール制であれば夜中でも早朝でも施設からの緊急電話があり、場合によっては時間等関係なく出勤する必要があり責任も重い。

今は給与は下がったものの、心の平穏を取り戻せた。見えてる景色や感じるもの、考えることが普通になった。
人生は一度きり、死にたくなるくらいなら、その場から離れれば良い。それでまた頑張れるかもしれない。世界は広いのだ。居心地が良く感じられる場所、いつもの自分でいられる場所、探せばきっとある。

もちろん、患者さんから感謝されて、自分自身が感謝したことも楽しく感じた時もあった。
けれど、しばらくは休戦だ。
看護師を辞めたが、ライセンスは私の手元に残っている。B4で、大きくて管理に困るライセンス。だけど、今の私を作ってくれたライセンス。
消えることはない。またいつか、看護師に戻りたいと心から思えるまで。