今年の夏は、今までのどんな季節よりも早く駆け抜けていった。私は、うだるように暑くて、ばかみたいにみんなが騒ぐ夏があまり好きじゃない。とにかく物理的に暑いし、みんなキラキラしだすし、見ていてうんざりするのだ。
でも、今年はそんなことを思う暇すらなかった。誰のことにもわき目を振らず、ただ一心不乱に、「自分のために」自分の時間を精一杯生きたように思う。
22歳になっても厳しい門限のある家庭。“The 箱入り娘”だった私
大きな変化となったのは、彼氏との同棲。今まで、どんなに家族と仲が悪くなっても、連絡を全く取らなくなることはなかったし、「もう嫌だ」とどんなに強く思っても、必ず最後は家族のもとへと帰っていた。
でも、社会人になって2年目に突入し、私の価値観と周囲の環境は180度変わった。いつまでたっても終わらないコロナが家族との関係に亀裂をもたらしたのと同時に、友人や恋人との間により深い絆ができたのも事実だ。
そこに共通するのは「自由」というキーワード。幼いころから「うちはうち、よそはよそ」が徹底していたため、高校に入学し、より幅広い交友関係を持つまで気づかなかったのだが、私は世間一般的に言うと“The 箱入り娘”だったのだ。
門限は高校生で18時、大学時代は22歳になっても22時が限界で、冬だと暗くなるのが早いことを理由に、いかなる理由があれど21時には帰らなければならなかった。
アルバイトでどうしても21時まで働きたくて懇願し、了承を得る代わりに必ず迎えが来るという徹底ぶりだ。
自由になるために家族の箱から出て、初めて仲良くなった今の彼氏
当然、同年代との遊び方、付き合い方も変わる。「門限が」「うちのルールが」という言葉が通用するのは、あくまで高校生までなのだということを痛感する4年間を過ごした。
そうした中で時間は過ぎて行き、気づけば社会人一年目を迎えていた。上京することになり、念願の一人暮らしを始めても、今思えばまるで義務付けられたかのように連絡をこまめにとっていた。
もちろん、毎回というわけではない。家庭の縛りがきついと感じるとはいえ、やはり家族のことは好きであったし、自発的に仕事の話や、その時々で好きな映画や趣味の話をしていた。それでも、学生のころから染みついていた「家族」というルールにどこか縛られ続けていたためか、閉塞感をずっと感じていた。
自由になるために箱から出て、初めて仲良くなって今も隣にいてくれているのが現在の彼氏だ。
家族から離れて、今年の夏は自由でいられた初めての季節
彼は私と性格が真反対で、楽観的で、ゆるくかまえていて、柔軟性が高い。でも、ダメなときはしっかりとダメと言ってくれる、そんな尊敬できる人である。去年、そして今年と2回の夏を二人で過ごしてきたが、今年は同じ家に一緒に住んでいるので、何かとぶつかる場面も、相手の存在を改めて尊く思う瞬間も散らばっていた。
彼といることが生活の基準になることで、私は「家族」から自然と分離し、仕事にも恋愛にも没頭し、初めて本当の「自由」を実感することができたのだ。
だから、今年の夏は私にとって、「自由」でいられた初めての季節だった。だから、周りに嫉妬を無意味に覚えず、心に余裕を持つことができた。この夏が、私を変えてくれたと心からそう思う。